◆千曲川河畔の桜並木 海野宿近隣◆

  北国街道海野宿での見ものは古い街並みだけではありません。
  街の南側にある千曲川河畔に植えられた桜並木の春の風景もまたみごとです。河岸段丘を利用した堤防沿いにおよそ600~700メートルにわたって桜が並んでいて、春には「花の堤防風景」が現れるのです。
  2020年春は新コロナウィルス肺炎の蔓延予防のために遠出や観光が制限されてしまったため、地元の人たちを除くと、この美しい桜並木を訪れる人はほんのわずかでした。たぶん、日本中の観光地のほとんどがそうだったのでしょう。
  ここでは、花が咲き始めた海野宿の桜並木の写真を掲載し、春の雰囲気を味わってみたいと思います。

▲堤防道路沿いの桜並木が600メートル以上も続く。左手に千曲川が流れる河川敷で、右手に海野宿の街並みがある。
  背景やや右手の丘陵は丸子方面の丘で、その一角に国際音楽村がある。


▲千曲川河畔の桜並木から東方の風景
 左端の尾根は浅間連峰の尾根で、御代田町、小諸市、軽井沢方面。

▲堤防の縁からの並木の眺め
  高低差3メートルほどの河岸段丘を利用した堤防で、河川敷では
2019年秋の台風豪雨被害を受けた河床改修工事がおこなわれている。

▲写真左下には千曲川の急流が白く泡立っている。


▲海野宿の街並みと堤防道路のあいだは水田中心の農耕地が広がる。

▲天空に向かって伸びる桜の枝と花。信州の春の陽射しは強い。

▲浅間山の山頂には残雪。

千曲川の流れに沿って緩やかに湾曲した段丘堤防

地元の老夫婦が桜の木の下にやって来た

600メートル以上続く桜並木



▲海野宿の街並みでも開花が進む

■海野宿の地理■

  海野宿の千曲川河畔にある桜並木を楽しむために、まずその地理的配置や条件を説明しておきましょう。
  したの写真は山頂部に雪がわずかに残る春の烏帽子岳です。海野宿の北北東にある、標高2006メートルで、峰は湯ノ丸山(標高2101メートル)とは約1キロメートル離れた尾根続きです。


烏帽子岳、頂上の奥には湯ノ丸山の峰がある▲

北東に見える残雪の浅間山(東御・湯ノ丸インターで)▲

南には蓼科山が見える(滋野で)▲

  というわけで、海野宿は烏帽子岳や湯ノ丸高原の尾根裾にあって、これらの峰々からおよそ12キロメートルほど離れています。この尾根裾の地形は暴れ川、千曲川とその支流群による浸食や堆積によって形づくられてきました。
  烏帽子岳や湯ノ丸山ははるか昔、活発な火山だったようで、それらの尾根裾でもところどころに巨大な火山岩が多数残されています。それらの火山岩は、これまたはるか昔、尾根や谷筋に発生した土石流によって押し流されてきたものでしょう。湯ノ丸高原は浅間連峰とも尾根続きになっています。
  上田から軽井沢までは、浅間山から菅平高原まで陸続する火山列麓の丘陵地帯になっていて、東御市本海野は上田盆地の東隣りの谷間に位置しています。


街中のレンギョウの古木にも花が咲いた▲

うららかな春の陽射しだが、風は寒い▲

■田園地帯の街と花■

  海野宿がある東御市は、千曲川河畔から烏帽子岳・湯ノ丸高原まで広がる高原地帯にあります。自治体としてのクルミの生産高は日本一で、千曲川を見おろす丘陵で栽培されるブドウから製造されるワインでも有名です。
  市街地には工業地帯もありますが、全体としては山林と田園に囲まれています。
  海野宿は市の市街地から南に少し離れた場所にあって、千曲川河畔の農耕地のなかにあるといってもいいでしょう。

  ほかの記事でも述べましたが、海野宿は幕末までの街道景観(宿場街の景観)の名残りをとどめています。それは旧街道の中ほどを流れる用水と、その傍らの植栽(庭園の断片)です。
  春から秋までは、旧街道沿いに樹木や草花が並んでいて、古い街並みに穏やかな彩を添えています。
  そして、街並みからは外れますが、千曲川河畔には桜の並木があって、田園地帯と河川時期とのあいだに美しい縁取りをほどこしています。
  古民家が並ぶ街並みだけでなく、そういう田園風景をも楽しんでください。

   


  右の写真は、2020年4月9日の海野宿の用水脇の植栽を写したものです。
  スイセンやサクラソウが開花し、ツツジやサツキの葉の芽が萌え始めた頃です。気候温暖化で信州では植物の開花や芽吹きの時期がどんどん早くなってきています。
  20年ほど前までは、こんな風景は4月下旬から末頃に見られたものでしたが、今では4月10日頃までには普通に見られるようになりました。その分、冬が短くなってきているわけです。寒気は植物の開花や芽吹きへのプログラムを起動するものだといますが、冬が短くなり厳しさが後退した分、花や葉の色合いが弱くなってきたように感じます。

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