木曾川の流水が花崗岩の岩壁を浸食して形成した寝覚ノ床の地形はじつに不思議なものです。なぜここだけ花崗岩塊がこのような浸食を受けて、このような形で残っているのか。
  木曾谷はだいたい花崗岩地質で、木曾山脈と御嶽の造山活動とともに近く深くから隆起した岩塊を木曾川が侵食して形づくった地形です。とことが、上松の寝覚など限られた場所だけ花崗岩の方状節理の地形が見られるのです。


◆奇妙な景観はなぜ、どのようにできたのか◆



寝覚ノ床がある谷間を見おろす。この場所だけが花崗岩の方状節理をとどめた地形になっている。



▲岩壁の部分は流速が非常に小さく、淀み淵になっている


▲ここは木曾川が強く蛇行する地点で、ほぼ直角に曲がる


▲花崗岩が流速や水圧、温度差を受けて方形の亀裂を生じている


▲流速が感じられないほど静かで緩やかな流れ

 木曾川がここでほぼ直角に曲がるから花崗岩の方状節理をきわだたせたのか、方状節理による岩壁の変形が、直角の蛇行をもたらしたのか。相互作用の結果ということか。

⇒寝覚ノ床ができた力学的メカニズムの詳しい説明

◆灰白色に輝く岩石◆

  中央アルプス宝剣岳の尾根は千畳敷カールの上部で、花崗岩質の岩稜や斜面が美しく灰白色に輝いている風景は有名です。同じ灰白色の輝きは、木曾谷の底、木曾川の河床にも見られます。
  他方、無数の花崗岩質の岩石が白く輝いて碧玉色の流れを引き立てて、木曾川の美しさをことさらに印象づけています。これらの岩石はほとんどの場合、流水で運ばれてきたので、角が取れて丸みを帯びています。
  流水中で岩石どうしが衝突し、こすれ合って摩耗し、鋭く尖った角が削られているからです。

  木曾の峡谷と山岳を構成している花崗岩は、中生代後期~晩期に地中深いところでマグマがゆっくり冷えて形成され、御嶽や木曾山脈(中央アルプス)の造山運動とともに隆起し、地表に出てきたのです。
  地表に出てきた花崗岩塊は水や空気、土砂の運動などによる浸食作用を受けて風化していきます。その過程の結果、岩石の形状は方形の亀裂ができて割れ砕けていくことになります。割れた面の外形は、四角形(方形)になります。これを方状節理と呼ぶそうです。

  ここの地形が寝覚ノ床という独特の美しさををもっているのは、木曾川の流れがここでほぼ直角に鋭く蛇行しているからだと考えられます。方形の亀裂や破砕が起きるということは、流れの圧力が直角のヴェクトルで作用するという力学がはたらいているからです。
  流れが南南西から南南東に鋭く曲がることで、花崗岩塊が直角という角度で亀裂=節理を生み、岩の形をつくっていくのです。
  とはいえ、木曾川の流れの形状は、花崗岩塊の方状節理の原因というよりも結果なのかもしれません。


流れの形状が方状節理を生む原因となっている

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