万治の石仏（大日如来）から鹿曲川の谷間を旧道沿いにさかのぼって、道のりでおよそ600メートル南進すると、道の西脇に天台宗の光明山満勝寺があります。天神城跡がある尾根（舌状台地）の東麓に位置しています。寺の境内の裏手の丘は、天神城跡の南端辺りに当たります。
  天神から比田井、さらに春日にかけての地帯は、古墳時代から人びとの生活と文化の痕跡があるところです。望月から春日に向かう旧道沿いの街歩きの一環として、満勝寺とその界隈を訪ねてみましょう。

◆協和天神地区の集落と満勝寺◆

  望月の街並みの南端まで南進した県道166号は、Ｔ字路を東に折れて望月橋や望月トンネルに向かっていきます。そのＴ字路から南に向かうのが県道151号で、万治の石仏の手前でやや西寄りに曲がって道を変えて600メートルほど南進し、協東橋東の交差点で左折して東に向かい天神尾根をトンネルで横切ります。

茅葺屋根の大棟に施された寺紋は武田菱

山門（薬医門）の扁額には「光明山」という山号

  八丁地川と鹿曲川とを分け隔てているのは天神尾根で、この尾根の東麓、鹿曲川の西岸にあるのが天神集落で、その中程の旧道沿いに満勝寺が位置しています。旧道沿いの家並みは600メートルほど続きます。
  この旧道は、すでに古墳時代に集落があったという比田井と望月とを結ぶ、古い歴史を誇る幹線だったようです。そのためか、この集落は宿場街だったわけではないけれども、比較的に道に面した間口が狭く奥行きが深い敷地割りをなしています。つまり集住村落の形態です。
  天神、農村ながら、古くから交通や交易の要衝として機能してきた都市的な邑村（集落）を形成してきたと思われます。

  満勝寺境内の裏には天神尾根の舌状丘陵が迫っています。丘上と境内との標高差は30～40メートルはありそうです。この辺りは南北に長く続く尾根の北端に近いところで、尾根ははるかに南まで続いて、蓼科山や白樺高原にまでいたります。

本堂は寄棟造りで正面中央に切妻破風がある

山門からのぼって配流境内は山裾斜面に位置している

石段を登って本堂前に出る

  満勝寺に関する史料はいまだ手元になく、創建の歴史や寺の来歴はわかりませんが、峻険な山岳にいたる尾根裾の立地からすると、室町後期までに天台宗の修験拠点として寺が開かれたのかもしれません。
  あるいは、寺紋が武田菱なので、甲斐の武田家との結びつきがある寺院なのでしょうか。佐久から望月にいたる地方は、数次にわたって武田家が甲斐から信濃に攻め込んだ経路なので、武田家ゆかりの寺院があってもさほど奇異なことではないからです。

急坂の上に並ぶ石碑や石仏。手前が百万遍念仏塔。