佐久穂町穂積の地形を見ると、千曲川右岸に3段ないし4段の河岸段丘が連なって東端の山岳にいたります。古来、千曲川の流水の破壊力はすさまじかったので、佐久甲州道は右岸に続く上から2番目の位置にある河岸段丘面を通っています。
  穂積天神の街並みの東側には高低差20メートル近くもある段丘崖が南北に続いています。上の段丘面は山裾まで広がっていて、そこにも海瀬や崎田、花岡などの農村集落が並んでいます。旧天神町は段丘崖の下、西方に千曲川を見おろしながら、一方、背後の段丘崖上から見下ろされる位置にあるのです。


◆千曲川右岸に階段状に連なる河岸段丘◆

 
背後(東側)の段丘崖上マルト道から穂積の家並みを見おろす。峡谷の底を千曲川が流れる。



▲街道沿いの集落の背後(東側)に続く段丘崖


▲小海線は背後の段丘崖の下を往く。南西に臨む八ケ岳連峰


▲線路の北方には浅間山を眺望する


▲土蔵が並ぶ細道は旧街道から段丘下の水田地帯に降りていく


▲漆喰壁が迫る細道はなんだか心地よい


▲広壮な古民家町家が並ぶ丘の上を見上げる


▲土蔵に挟まれた細道を降り切ってから来し方を振り返る


小海線八千穂駅の背後に迫る段丘崖

◆南西に八ケ岳、北方に浅間山◆

  八千穂駅と穂積天神は佐久平(盆地)の南端にあって、街並みの北方の彼方、およそ36キロメートル先には浅間山の秀峰を遠望することができます。他方、南西の彼方には雄大な八ケ岳連峰を望むことができます。そして、そして街の西方の谷底に流れている千曲川を見おろし、その対岸に迫る山並みは、蓼科山の頂にいたる尾根の先端なのです。
  ここは千曲川河畔(右岸)にあって、山峡の小海町からようやく佐久平の南端に出てきた地点にあります。峡谷の底に流れる千曲川の両岸には、何段かの河岸段丘が北に続いています。西岸の傾斜は険しく、東岸河畔から2ないし3段の段丘をのぼってきたところに旧街道と街並みが位置しています。
  佐久を縦断する甲州道脇往還は、千曲川の水害を避けるために上から2番目の河岸段丘面を通っています。小海線八千穂駅や旧街道が位置する段丘面と上の段丘面との標高差は20メートル近くもあります。八千穂駅は800メートル近い標高にあって、穂積天神の集落も同じ段丘面に位置しています。そこから谷底の千曲川河床までの標高差は50メートル近くもあります。
  一番上の段丘面には崎田や花岡などの村むらがあって、その北側は海瀬集落で、国道462号が佐久平から山間を南東に向かい武州秩父に連絡しています。


穂積集落から崎田集落にのぼっていく道

◆千曲川河岸段丘にある街と街道◆

  こうして、八千穂穂積天神は、南佐久の山地から佐久平への出口にあって、千曲川河畔にようやく河岸段丘――河川に並行する細長い平面地形――がそれらしい形を見せ始める場所です。
  今回の記事では、集落や駅がある段丘面の背後に迫る段丘崖や、西側の下の段丘など階段状に下っていく地形を探してみました。

  千曲川に近い下の段丘面の水田地帯から古民家を含む集落の家並みを見上げる景観は、高低差が明確で、立体感や奥行き感を感じる、南佐久の風景としてなかなか印象的な景観です。
  私はそういう風景に懐かしさと安堵感を覚えます。


小海線の踏切から街道方面を眺める

|  前の記事に戻る  ||  次の記事に進む  |