目 次 (カリキュラム)
1 スキーはなぜ回旋するのか |
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エッジングによる摩擦でスキー板が回旋する ターンの内側のスキーと 外側のスキー 基本は、 外側スキーのインサイドエッジへの加圧 内側のスキーは支え |
ところが、このようにゲレンデを滑り降りながら片側スキーの一部分に加圧し、その結果、斜面を旋回しながら滑り降りるという運動は、静止状態の安定性を大きく崩す結果を招きます。身体が揺れたり、転倒してしまったりする危険があります。 |
傾斜のある雪面でスキー板がなぜ旋回するのかを説明します。左側のイラストを見ながら、解説を読んでください。 まずスキー板が1本の場合で考えてみます。スノーボードで滑る場合と同じです。 板は最大傾斜線に沿って重力の作用で雪面を滑り降りていきますが、仮に板の右側のエッジに加圧したとします。 すると、右側には制動がかかって、滑る速度は抑えられますが、左側には制度がかからず、速度は抑えられず、むしろ重力加速度を受けて滑る速度は上昇していくでしょう。 そうなると、左側が加速し、右側がブレーキしますから、スキー板は右に旋回することになります。この場合、右側をターンの内側、左側をターンの外側と呼ぶことにします。 ということは、スキーヤーはターンしたい方向の側のエッジに加圧すれば、望み通りにターンできるということになります。 さて、では2本のスキー板を装着して雪面を滑りターンする場合について見てみましょう。 スキーでは、雪上での歩行移動などの運動性と安定性を保つために、2本のスキーを装着して左右のバランスを保つようにしています。 そして、原則としては、片側の板をターン方向を制御するために用い、他方を安定性を保つための支えとして用いることになります。 左図では、右にターンするために、ターンの外側(つまり左側)の板のインサイドエッジに加圧し、他方で内側のスキーはバランスを保つための支えとして、板全体に均等に加圧するという原理を示しています。 |
2 プルークボーゲンによるターンの練習 Pflugbogen |
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スキーの練習では、自分の姿勢や動きを真上から、前から、横から、後ろから眺めると、どうなっているかを意識・イメイジすることが大変に重要です。 一緒に練習する仲間がいるのなら、自分の滑りを画像に撮影してもらって検証すると、修正すべき点が明確につかめることも多いです。 |
できるだけ足にフィットしたブーツを選ぶ。緩めの靴を履く人は上達しません。 靴を履きならしながら、隙間の有無を調べること。 足幅の大小や甲の高低による隙間はインナーブーツへのパッド(詰め物貼り込み)で塞ぐこと。 パッドなどの調整用品はスキー用具店で売っています。 靴が緩いと、足の力が板にしっかり伝わらないのです。 ブーツの形を真横から見ると、膝を曲げて前側に下肢が傾いている状態になっています。これは、雪斜面でスキーを装着した場合に、標準的に最も安定した形状なのです。 雪斜面を滑るときには、膝を前に出すようにブーツの形がつくられているのです。 |
プルークボーゲン Pflugbogen とはドイツ語で「犂で波形を描くこと」という意味です。つまり、両スキーでV字型をつくって雪面を滑り降りながら波形にターンしていく、という技術です。 実際に滑って練習する前に、スキー靴のはき方と靴への力のかけ方――体重のかけ方――を説明しておきます。 まず靴は足のサイズにぴったりと合わせて選んでください。靴のなかに緩みがあると、力が靴やスキー板にしっかり伝わりません。 スキー靴を装着するときには、身体を前に倒すか、膝を思い切り前に出して、向こう脛に全体重をかけるつもりで、踵の後ろに隙間がないようにしてください。 雪斜面を滑るときには、つねにスキー板のバランス中心に重心を置いておくようにするのですが、そのためには、膝の向こう脛で靴を抑え込むような気持で、向こう脛にすべての体重をかけるようにします。そして、足の母指球から土踏まずを結ぶ線に加圧します。 ふくらはぎ側(後ろ側)に体重がかかっていると、雪上で身体が不安定になり、しかもスキーのエッジに加重できなくなります。 つまり、エッジングが甘くなり、ターン弧の正確さ(切れ味が)なくなります。 |
V字開きのプルークボーゲンは、このあとの技術の習得にために非常に重要なものです。甘く見ないようにしてください。これが不十分だと、このあとの本当の上達はありえません! 両スキーを平行に狭くそろえるのが上手な形という思い込みはまったくの誤りです。 いやになるほどプルークボーゲンを練習して、習熟すると、パレレルターンやウェーデルンの習得は数時間で済みます。しかし、プルークボーゲンができないと、何年続けても上達しません。 |
斜面で両スキーのインサイドエッジへの加圧を弱めて雪面を押す力を小さくすると、摩擦による制動がなくなるので、斜面の下に向かって滑り出します。 |
プルークボーゲンの基本静止姿勢左図を見てください。最初に傾斜のない平らな雪面でプルークボーゲンの静止姿勢を取ります。まず両スキー板の先端を閉じて後尾を開き、V字型にします。 次にストックを持つ両手の拳のあいだを、肩幅の2倍ほどの幅(70~80センチメートル)に開きます。そして、膝を前に押し出しながら腰を落とし、上体を少し前に傾けます。 さらに、両膝を内側に捻り、両スキーの内側エッジがより深く雪面にめり込むようにします。このとき、ブーツのなかでは、土踏まずと親指を結ぶ線に加重し、加圧の中心は親指の付け根辺りに置きます。 両スキーのインサイドエッジが雪面に食い込むことで、スキー板を固定し姿勢の安定性を保つようにします。 プルークの直滑降斜度がない雪面でこの基本姿勢を取ることに慣れたら、今度はごく緩やかな斜面に出て、両スキーのインサイドエッジへの加圧を弱めて坂の真下に向かってまっすぐに滑り降りてみましょう。5~10メートルほど滑ったら、今度は両スキーのインサイドエッジへの加圧を強めて速度を落としていき、完全に静止するようにしましょう。この運動を何度か繰り返して、プルークの直滑降に慣れましょう。 |
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初級者が斜面を滑り降りる場合に陥りやすい状況(弱点)は、膝が伸びたままで突っ立った姿勢になること、そして、滑っていくスキーに膝や腰、上体(胸・肩)が遅れてしまうことです。 左右にターンする動作(波形や弧を描くこと)をシュヴング Schwung と呼びます。ドイツ語ですが、英語の swing に当たる言葉で、スキー用語としては「ターン」を意味します。 |
緩斜面でのプルークボーゲンのターン初級者のプルークボーゲンの練習は、斜度10°くらいの整地された雪面でおこないます。緩斜面でプルークボーゲンの静止姿勢を取るためには、両スキーのインサイドエッジをより深く雪面に突き立てる(押し込む)ようにします。エッジの食い込みが甘いと、ズルズル滑り出してしまいます。 滑り出すためには、このエッジングの加圧を緩めます。ある程度加速してからでないと、ターン動作ができません。滑り出しは斜めの方がいいでしょう。 斜めに滑り出してから、ターン動作に入ります。そのターン弧の外側になるスキーのインサイドエッジに加圧します。 まず左ターンに入るためには、右スキーのインサイドエッジに加圧します。右ひざを内側に回し込みながら、右足の内側、つまり母指球から土踏まずにかけての部分に強く加圧します。 このとき、左スキーでは、足裏全体に荷重しながらも軽くインサイドエッジに加圧して、バランスを保つ支えとすることで安定を保つようにします。 このとき、肩はあまり回さないようにすることがポイントです。肩や腰を回してターンに持っていくのではなく、肩や腰はあまり回さずに、腰から下、とくに膝の回し込みと足裏での加圧によってターンを導くようにします。 その場合のターンの横幅(振幅)は、最初のうちは10メートルくらいにします。そして、振り幅を広くしたり狭くしたりしながら、さまざまな弧の大きさのターンを試してみましょう。 この場合、重心は腰の中心辺りにあるのですが、それをスキーの中心に置いたままで移動させません。重心の位置は変えずに、左右スキーエッジへの加圧の交互に変えることで、ターンをおこないます。 そのさい肩を大きく回すと、次のターンに入る前に肩を戻さなければならなくなって、そうしているあいだにスキーは滑り続け、加速してしまいます。つまり、次のターン動作への切換え動作が遅れてしまううえに、加速して不安定になります。 重心を移したりすると、これまた重心位置を戻すために時間を取ることになり、加速しすぎたり、不安定になったりしてしまうのです。 肩と顔の向きは、ターンの後半では次のターン弧の中心を見つめるようにして、次のターン動作への準備姿勢を取ることになります。 肩は回さず、重心も移さず、ターンは膝の回し込みとエッジングの切換えで! というのが鉄則です。 初学初級者は、スピードにあまり慣れていないので、ターン時のエッジングで速度がかなり落ちてから反対向きの次のターン動作に入るのがよいでしょう。しかし、速度・推進力がまたく失われるとターン動作に入ることができません。 プルークボーゲンのターンに習熟し慣れるにしたがって、ターンの切換えのタイミングを速くしていきましょう。 そして、雪面の斜度を少しずつ上げていきましょう。 普通は、滑走速度を高めると、横振れ幅(振幅)に対するターンの縦の長さ(周期・降下高低差)の比率が大きくなります。それだけ、重力加速度(斜面を滑り落ちる力)が大きくなるということです。 こうしてみると、プルークボーゲンでは、同じ斜度の雪面で滑る場合、横振れ幅を大きくすると滑走速度は小さくなり、縦の長さを大きくすると速度は大きくなるという関係があるわけです。 お問い合わせ・ご質問は電子メイルでどうぞ |
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次の段階「プルークのウェーデルン」に進む |
回旋運動でのさまざまな力のはたらき |
ところで、雪面でのターン運動では、身体とスキーにはさまざまな力がはたらいています。ここでは、とりあえず雪面の起伏や傾斜による上下の動きは度外視し、平面上の力の作用を考えます。 重りをつけた紐を回して回転させるときと同じように、雪面での回旋運動でも向心力と遠心力の拮抗状態が生じます。 遠心力は滑走速度が大きいほど、またターンが急になるほど、大きくなります。遠心力は身体をターン弧の外側へ振り飛ばそうとする力としてはたらきます。 ということは、雪面でのターンにさいして、スキーヤーは雪面の起伏や斜度による体の揺れに耐えて抑えるだけでなく、遠心力にも耐えて視線を安定させなければなりません。 |
3 ステップ動作による雪面の移動 |
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平行ステップ歩行 |
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平行ステップ歩行パラレル parallel とは、英語で「並行」という意味ですが、スキーでは両スキーを平行に開くことを意味します。斜度のない平滑な雪面で、両スキーを肩幅ほどに平行に開いてください。そして、左か右かどちらかのスキーを膝を軽く持ち上げて歩くように前に踏み出します。このとき、後方に残り軸となる足・スキーをしっかり踏みつけて推進力を生みだすとともに、踏み出す膝の動きに先行して両肩と頭、ストックと上体を前に押し出します。そして、これを繰り返して前方に移動します。 肩や上体が脚とスキーの動きに遅れないように、むしろ先行するように意識します。ストックは慣れないうちは動かさなくてもいいでしょう。 この動作を平行(パラレル)ステップ歩行と呼びます。 |
スケイティング・ステップは、ウェーデルンやパラレルターンの高度な技術を学ぶためには不可欠です。 |
前開きステップ歩行
スキーのステップ歩行としては、ほかに前開きステップがあります。スケイトの加速のための踏み出しと脚・足の動きがよく似ているので、ステイティング・ステップともいいます。 |
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両ストックは姿勢を支えるアンカーのように使うこと。ただし、ストック(腕の力)頼りすぎるのは誤り。ストックなしでこの姿勢を保てるようにすること。
斜面を登るためには、両スキーを平行に保ったまま、山側スキーを斜面の上側に移動しエッジを雪面に食い込ませ、そのスキーを軸として、下のスキーを上に引き上げてエッジを雪面に食い込ませます。 |
サイドステップでの斜面移動ステップ歩行には、平地の移動方法だけでなく、斜面を移動する(登る・降る)方法もあります。そのひとつ目が、サイドステップです。文字通り、横へのスキーの踏み出しによる移動です。 まず静止姿勢を保つために、両スキーの斜面上側(山側と呼ぶ)のエッジを強く雪面に食い込ませる。 サイドステップの正しい基本姿勢を保つのはかなり高度な技です。 左図のように、サイドステップでは、斜面の傾斜線に対して両スキーを直角の平行開きにして、肩と顔は真下近く、つまり真下方向を見る姿勢を取ります。上体を坂の真下に向け、お尻はできるだけ後ろ向きにして坂の上方に向けます。 斜面を怖がって、お尻を斜面下側(谷側と呼ぶ)に向けてしまうと、バランスを崩して転倒したり、滑落してまいます。肩と顔を谷側真下に向ける、これがポイントです。 この技術をマスターすると、相当に急峻な斜面でも静止したり、登ったり、水平移動できます。 斜面を登る歩行方法として、あまり斜度がない斜面では、前に習った前開きステップを使って、前向きに斜面を登ることができます。 ⇒次のステップ プルークのウェーデルンに進む |
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