目 次 (カリキュラム)
4 プルークのウェーデルン Pflugkurzschwung |
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プルークボーゲンを十分に習熟したら、そこからただちにウェーデルン技術を学ぶことにします。プルークウェーデルンです。 小回りターンは、ウェーデルンと呼びますが、これはドイツ語の Wedeln (ヴェーデルン:左右にひらひらと揺れるさまを意味する)を英語読みした言い方です。短いターンなので、ドイツ語で Kurzschwung と表記しますが、要するにショートターン short turn ということです。 ごくごく単純化して言うと、プルークボーゲンのターンのタイミングをどんどん速くして、ターン弧の大きさを小さくし、滑走速度を速めていくと、プルークウェーデルンになります。 V字開脚ターンを素早く繰り返すことができるようになる、これが目標です。 ここでは、エッジへの加圧の切換え、つまりエッジングの切換えのタイミングをどんどん速くしていくこと、切換えの速さに対応した姿勢変化に慣れることがポイントです。 比喩的なイメイジで表現すると、自転車のペダルを漕ぐ速さをどんどん速めていき、回転速度を大きくするということです。 ウェーデルンらしくしてきうためには、プルークシュヴングの切換えのタイミングを、はじめは5秒ごとにターンというタイミングから始めて、3秒ごとのターン、2秒ごとのターンへと段階的に切換え速度を大きくしていきます。 速度を高め回転のタイミングを速くしていくためには、V字に開脚した左右のスキーテイルの開き幅をどんどん狭くしていく必要があります。 私の経験では、プルークでのウェーデルンは姿勢の変化が大きいので、2秒ごとに1回ターンまでいくと、もうそれ以上は速くならないと思います。より上級者から見ると、余計な動きが多くて時間がかかってしまうため、もうそれ以上に俊敏な交互回旋運動ができない限界にぶつかったのだことになります。 それでも、2秒に1回のターンを繰り返すというのは、かなり上達したということで、立派にウェーデルンと呼ぶことができるでしょう。 ここで、雪上の物理学の話題として理屈っぽく言うと、プルークはまだ速い滑走速度や斜度が大きな斜面に慣れていないレヴェルの滑り方です。V字型に開脚するのは、雪面への接地底面積を大きくして安定性を保つ方法です。 安定性を保ちながら、左右スキーのインサイド・エッジへの加圧の切換えをおこなうのです。開脚した分だけ、雪面への摩擦抵抗が大きくなるのでです。 慣れるにしたがって、スキー開脚の幅は狭くなっていき、ターンのタイミングも速くなっていきます。だから、どんどんスキー開脚幅を狭くして、やがて平行開き状態になれば、これはパラレル・ウェーデルンとなるので、もう中級者です。 この記事で、プルークボーゲンからいきなりプルークウェーデルンに進んだのは、パラレル姿勢を保ちながらエッジングを切り換える動作をおこなう運動 Parallelschwung には、独特の難しさがともなうからです。 難しいというのは、両右スキーの平行揃えのまま斜面で横滑りさせながら、バランスを保ちエッジングの切換えをおこないターンを繰り返すからです。また、片側スキーだけで重心とバランスを保つ技能が必要とされるからです。 そこで私たちはまずプルーク姿勢での回旋の限界に挑でターン操作に慣れることを優先し、その次に、パラレルシュヴング、パラレルターンの訓練に進む必要があるのです。 今後の訓練計画としては、次にパラレルターンへの準備段階としてシュテムシュヴングとギルランデを学び、その次には大きな弧のパラレルシュヴング Parallellangschwung (パラレルのロングターン)に進むことになります。 シュテムターンは、プルークターンとパラレルターンの中間点にある技術ということになります。 |
5 シュテムシュヴング Stemmschwung (シュテムターン) |
それではシュテムターンに進みましょう。 ドイツ語でシュテム Stemm とは、ここでは自転車の補助輪のような支えがある状態を意味します。この補助輪は、パラレルターンに進むための補助=支えとして、不安定になりがちなターンにさいしてプルーク姿勢(V字開脚)を取るという点です。 まず斜度10~15°くらいの平滑整地斜面を選びます。 最初は斜めに斜面を滑り出します、そしてターンを開始するために両スキーのトップを閉じたままテイルを開いていきます。左図で言うと、右ひざを回し込みながらインサイドエッジに加圧して左にターンしていきます。ターンが完了したら、ふたたび平行開きに両スキーを狭くしていきます。次に、これと反対向きの動作をおこないます。 これを繰り返してターンを続ける技法をシュテムシュヴングと呼びます。 ターンを開始するための片側スキーの開き出しの方法は2つあります。どちらもスキーのトップではなくテイルを外側に開き出します。 一つ目は山開きシュテムターンというやり方で、山側(斜面上方)のスキーテイルを外側に押し出すように開き出します。このとき、インサイドエッジに加圧していきます。山側に開くので、山開きターンと呼びます。 この方法では斜滑降からただちにターンを開始することになります。 もうひとつは谷開きシュテムターンで、谷側(斜面下側)のスキーテイルを開き出します。開き出しながら、山側スキーのインサイドエッジに加圧していきます。ただし、通常はどうしても開き出したスキーに加圧されるので、いったんは山側に曲がってから逆向きのターンが開始されるという形になります。 このようにスキーの開き出し方法には2種類あるのですが、私は山開きシュテムターンだけできればいいと考えます。というのは、いずれ上達すれば、谷開きシュテムターンは自然に覚えていくからです。この段階で谷開きに挑んで混乱するのは、まったくの無駄です。 |
シュテムターンのシュプール |
横滑りの基本静止姿勢 |
横滑りとギルランデ(斜滑降)シュテムシュブングでは斜滑降の姿勢制御と安定確保が大事な要素となります。横向きや斜め前方下へのズラシをおこなう技術を習得する必要があります。まず横滑りを練習します。 斜度10~15°くらいの平滑整地斜面で左図のような姿勢を取ってください。ポイントは顔と肩は谷側を向く、斜面に両スキーのエッジを食い込ませて静止するということです。お尻を谷側に向けない! というのが鉄則です。 まず、雪面に食い込ませたエッジを少しずつ緩めていきます。すると、真横=真下に素練り落ちていきます。そしてふたたびエッジを雪面に突き立てる(食い込ませる)と静止していきます。 このとき、両膝を山側(斜面上側)に寄せて、上体を谷側に少し前傾する――必要ならストックを支えにする――ことが必要です。上体は谷側を向く、そのときに膝は山側に寄せる、これがポイントです。 そして、《エッジを緩める⇒突き立てる⇒緩める⇒突き立てる》という動作を繰り返して、横滑りに慣れてください。 真横=真下に滑り降りるのに慣れたら、斜滑降(ギルランデ)に進みます。ギルランデ Girlande とは、ドイツ語で斜面を斜めに横切ったり、その対角線上を降りていくという意味で、スキーでは「本来の斜滑降」を意味します。 横滑りとの違いは、斜め前方にズレて行くという点です。ということは、真下に進む力に加えて、前に進むというヴェクトルがはたらくということです。 斜め下に進むためには、スキートップを少しだけ下に向けて腰を斜め下に持っていくという意識が重要です。 これが斜滑降ですが、その練習では、降っていく角度を深くしたり、浅くしたりと変えてみてください。力のかけ具合やらエッジングの加減やらをさまざまに試してください。 次に、エッジを雪面に押し付けたままの斜滑降から横滑り(ズラシ)を入れた斜滑降へ、そしてふたたびエッジを突き立てたままの斜滑降、さらに横滑りを入れた斜滑降へ、という動作を繰り返してみてください。 シュテムギルランデの練習では次にシュテムギルランデの練習に進みます。シュテムギルランデとは、雪斜面を対角線に沿って滑り降りる斜滑降のなかにシュテムターンを入れる滑降方法です。 この段階で、谷開きシュテムターンの技術を習得します。 |
シュテムギルランデのシュプール
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まずパラレルの斜滑降でしばらく滑った後に、山開きのシュテムターンで真下に向けて回旋します。そして少し加速したら、今度は谷側スキーのインサイドエッジに加圧するシュテムターンで減速しながら横向きに回旋してふたたびパラレル斜滑降に戻します。 右にギルランデしたら、こんどは向きを変えて、左にギルランデしてください。 |
ここでのポイントはターンへの切換えを素早くおこなうために、開き出したスキーのインサイドエッジに強く加圧していくということです。 自転車のペダルを漕いで回すようなイメイジで開き出し(踏み換え動作)を試みてみます。 お問い合わせ・ご質問は電子メイルでどうぞ |
浅い角度でのシュテムギルランデに慣れたら、斜度15~20°くらいのより斜度が大きな斜面に移って、より高速のシュテムギルランデ――2秒ごとにパラレルとシュテムターンを切り換えるように――試みてください。 シュテムターンの開き出しをだんだん狭くして平行にしていけば、パラレルギルランデとなっていきます。 |
次のステップ パラレルターンに進む |