目 次 (カリキュラム)
9 ベンディングターン Bending Turn |
スキー板のベンド性能雪面滑走中では板に荷重して下に撓んだ次の瞬間に上に反り返すコブを跳んで中空で次のターン姿勢をつくって着地する膝を屈曲させた中腰のウェーデルン 俊敏な膝の回し込みやスキーの振りの感覚をつかむために、スケイトやインラインスケートのトレイニングも必要です。 |
スキー板のベンドここからは、コブ斜面(オフピステ)でのウェーデルン技術の習得のための練習です。コブ斜面、オフピステではほぼ完全な同時操作のウェーデルン技術が求められます。踏み換え交互操作の技術では、起伏が激しい雪面での姿勢変化が激しい滑りはまず不可能です。揺れや上下動を2本のスキー(つまりより広い底面積)で支える必要があります。そこで、完全な同時操作のターン技術が必要になります。 この同時操作のために利用するのがスキー板のベンド(屈曲と反発)性能です。ベンドを利用した同時操作ターンを、私はベンディングターンと呼ぶことにしています。 スキー板のベンド性能がどれだけのものか知るために、両スキーを装着して、ほぼ直径70センチメートルから1メートル、深さ5センチメートルほどの凹みの上で板に強く荷重してみてください。すると、いったん板は下に撓み、次の瞬間に上に反り返ります。この操作を数回繰り返して、スキー板の飛び跳ね具合を確認してください。 ベンディングを利用したターン斜度15°以上の中斜面で、ベンドを利用したターンの切換えの練習をします。滑り出してから、ターンのための膝の回し込みと同時に両スキーを雪面に押しつけます。このとき、ターンの外側のスキーのインサイドエッジの方により強い加圧をします。スキーは撓みながら回旋を開始します。 すると、スキーはターンしながら、反対向きに反り返ります。この瞬間的な作用を利用して、次のターンの態勢に入り、膝の回し込みとスキーの押出しくをおこないます。腰も膝を補助するように回すことになります。 足裏の間隔を鋭くして、反り返りの瞬間運動をとらえて反対向きのターンへの態勢に移行するわけです。反り返りは速いので、1秒間に2回くらいのターン切換えのタイミングになるでしょう。 ターンするために膝を回し込んでエッジングするとスキーは撓みますが、次の瞬間にその反動として反発(撥ね返り)が起きます。スキーが浮き上がります。その反動・反発・浮き上がりの瞬間をとらえ利用して、スキーの向きを変え、反対側への回し込みをおこなうのです。3分の1秒くらいの瞬間の操作です。 上体(顔と肩)は真下を向きながら、俊敏なターンを繰り返すために、腰は激しく左右のひねりに対応して動きます。瞬間の反射能力とともに腹筋や背筋、太腿や膝の筋力が多いに求められます。スクワットや同時操作の飛び跳ね練習で、瞬発力や筋力をつけていきましょう。 しかし、はじめてベンディングターンに挑戦した人は、おそらく足裏感覚で撓みと反り返りを感じ取ることはできないでしょう。これには、スキーの性能の問題もあります。高品質のスキーを買うことも必要です。私は、この数年以上、私の筋力に合ったものとして、オガサカスキーのKEO'Sを使っています。UNITYもおススメです。価格はかなり高い高級品ですが、型落ち(アウトレット)で3割ほど安くして購入しています。 コブを利用したジャンプ・ターンと呼ばれるターン技術があります。ベンディングを利用してコブを跳びながら、中空で姿勢を次のターンの形に変えながら着地し、そのまま次のターンに入るのです。 飛び出した瞬間に姿勢を変えて、次のターンに合わせた姿勢にして着地するのです。 滑らかな中斜面にコブをひとつつくって、そこにパラレル姿勢で緩やかなターンをしながら乗り込み、頂部で勢いのまま飛び出して、膝を逆向きターンするように回し込んで上記の姿勢変更をおこない、着地と同時に次のターンを描きます。 練習方法としては、はじめは、ただまっすぐ前方に飛び出してターンなしで着地するところから始めて、小さなターンから試してみましょう。 そして、最初は着地点が平滑でコブがない雪面で練習し、次に着地点に小さな高低差の小さいコブがある雪面、最後にコブからコブに続く斜面で試みていってください。この練習では、ゲレンデの端に自分で雪を盛り上げてコブをつくっておこないます。 ジャンプのさいに前傾しすぎると、着地したときに前につんのめって危険ですから、膝を屈曲させて前に押し出しながら、上体はやや後傾気味にします。そして、着地のさいにはしっかりと外向傾姿勢――ただし前傾を深くすると危険――を取ってください。 スキーが中空にある瞬間にエッジングを切り換える練習にもなります。 かがみ込み・中腰ウェーデルンベンディングウェーデルンに習熟するための練習方法として、「ホッキー(ホッケー)・ウェーデルン」とも呼ばれるものがあります。やや斜度がきつめの斜面でおこなう高速ウェーデルンです。斜度18~20°くらいの雪面を選びます。 ひざを最大限屈曲させ、中腰まで腰を折り曲げた形の、窮屈な形のウェーデルンです。両手を膝や太ももの上に置いてもいいでしょう。あたかも氷上でのホッキー(ホッケー)の待機姿勢のようなので、ホッキー・ウェーデルンとも呼ばれるのです。 これは、腰掛けら下の運動、つまり膝の素早い回し込みを繰り返すウェーデルンで、1秒に2回くらいのターンの練習です。速さに対応するのと、膝を深く折り曲げるために、重心の低い屈曲姿勢を取るのです。 そして、これが大事なのですが。ストックワークなしで膝の回し込み(つまりベンディング)だけで、素早いターンを繰り返す技術を身につけるのが目的です。そして、速い振りのなかで姿勢の安定を保つ訓練ともなります。 このような練習によって、20°以上の急斜面では1秒間に3回のターンができるようになるでしょう。ただし、これは私の経験にもとづいています。私はそこそこ俊敏で、30歳近くまで後方宙返りをすることができましたので、ひょっとすると、人並み以上の身の軽さが必要かもしれません。 |
10 そのほかの高度な技術 |
コース変えのための横ずらし上図のように、ターンの途中でベンディングによるスキーの向きとエッジング具合を変えて、横滑り斜滑降をおこなって、ふたたびターンに戻します。 |
この技術は、自分の滑走進行方向に他人が入ってきたり、不規則なコブがあったりして、急遽、滑走コースを変更したい場合に用います。 もちろん、この技術はウェーデルンだけでなく、ロングターンやミドルターンでも使えます。 この技術を用いるのは、緊急性の高い場合で、スペイスに余裕があれば、ターン弧の大きさや深さを変えれば済むわけですが。 内スキーの外側エッジ加圧のターン両スキーの同時操作のターンをしているときには、ターンの外側スキーのインサイドエッジへの加圧をより強くするのが安全なスキーの原則ですが、危険回避のため、あるいは大回転や回転などの競技スキーで旗門を攻撃的に回り込み通過するため、この原則を破って、ターンの内側スキーのアウトサイドエッジに加圧してターンする技術があります。 |
ところが、ターンの内側のアウトサイドエッジに強く加圧すると、内側に向かって大きな力がかかるので、身体をしかるべく思い切って内傾させないと、衝撃に耐えられなくて転倒してしまいます。これに対抗する身体操作はかなり高度な技能や反射感覚を必要とします。相当の習熟が必要です。 |
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