▲厳冬期の青木湖
▲千国街道の道標
千国街道から眺める大町の雄大で美しい風景を理解するために、この辺りの地理を説明しておきましょう。下にグーグルマップへのリンクを設定してありますので、参照してみてください。そのさい、航空写真にすると森や田園、街並みなどが実感できます。
さて、大町市の北端に青木湖や木崎湖がありますが、この辺りが北安曇の盆地で最も標高が高い地点です。ここで北に流れ下る水は姫川に合流して糸魚川で日本海に注ぎ込みます。一方、南に流れ下る水は農具川などとして南下して高瀬川に合流し、犀川・千曲川・信濃川となります。
高瀬川が槍ケ岳の北斜面を北流し、さらに後立山連峰東斜面の降水を集めて東に転流して大町市に流れ込み――上水内~筑摩に連なる山脈にぶつかり――南転して犀川に合流します。
というわけで、膨大な水量が安曇野北部に流れ込み長い年月にわたって浸食作用と堆積作用を繰り返してきました。大町市には広大な谷間に複合扇状地が形成されました。
▲千国街道沿いのリンゴ園
さて、千国街道は小谷村、白馬村を経て青木湖や木崎湖の畔を抜け大町市の東山の裾野に出てきます。今回歩いたところは霊松寺山の西麓です。ここは、山麓の河岸段丘上の高台で、そこから東山の斜面が始まるところです。
したがって、千国街道の西には大町市街とその背後の北アルプス連峰の大パノラマが展開していて、街道を歩くときには素晴らしい風景を眺めることができるわけです。
千国街道は、国道や県道が整備されると脇道となって、やがて昭和期から長らく農道として利用されてきたもので、舗装されていますが、クルマの対面交通はできない狭い小径です。近年になって、山麓の田園地帯を往く遊歩コースとして注目され、整備されてきているようです。歩いたり走ったりするには向いていますが、ドライヴには不向きな道です。
というしだいで、山岳風景や並木道、田園……そういう美しい風景を楽しみに多くの近隣住民たちが散歩やジョッギングなどにやって来ます。サイクリングにも最適なコースです。
▲市街が間近まで広がっている
今回訪れたのは11月の上旬で、季節は晩秋から初冬へ移ろう頃で、街道沿いの桜並木の紅葉はすでに散り始めてから数日たっていました。春には、街道を歩きながらの花見の名所となるのでしょう。
街道沿いの農耕地ではリンゴを除いて収穫期を終えています。寒冷気候に強いリンゴの木は、まだ緑の葉を残しています。リンゴ園では、例年、フジが11月半ばから12月はじめにかけて収穫されています。収穫間近のフジの実は赤くなっていました。
▲山裾の市民の森公園
▲落ち葉を踏んで散策するのも楽しい
▲公園から市街地を眺める
リンゴ園を過ぎると街道の東側は山林地帯になりますが、そのなかに「市民の森公園」があります。山腹から山麓にかけての斜面の一角に芝の広場と叢林が整備されています。斜面は西向きで、公園から大町市街を見おろすことができます。
その近くの住宅では、老夫婦が収穫したばかりの大豆を材料にして味噌の仕込みをおこなっていました。香ばしい匂いが辺りに立ち込めていますが、信州の晩秋の懐かしい風情です。
▲収穫した大豆で味噌の仕込みをしている老夫婦
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