目 次 (カリキュラム)
7 ウェーデルン Kurzschwung (小回りターン) |
エッジング切換えのタイミングが速いターンターンの瞬間の身体の様子を真上から見ると・・・左ターン右ターン |
小回りの連続ターンそれではウェーデルンに進みましょう。ドイツ語の「クルツシュヴング」とは「短いターン」という意味です。ドイツ語綴りの英語発音のウェーデルンは、振幅が小刻みの揺れや振動という意味です。 このサイトでは、プルークボーゲンからプルーク姿勢のままでターンの切換えを速くするという練習法でウェーデルンにアプローチすることを解説しました。これがウェーデルン習得へのひとつ目の方法です。 練習用の雪面として、斜度15~20°くらいの整地された斜面を選び、滑り出しはプルークウェーデルンから始めて、しだいに両スキーの幅を狭めて平行にしていき、パラレル姿勢に変えていくというやり方がおススメです。 さらに、この直前に学んだパラレルターンができるようになったら、ターン切換えのタイミングを速くしていくという方法でウェーデルンを習得する道もあります。これがふたつ目の方法です。 では、どれくらいにターンの切換えのタイミングは速くなればウェーデルンと呼べるのか? という疑問が出るでしょう。ここでは、コブ斜面・オフピステででのウェーデルンの習熟という目標からして、2秒に1回以上のターン滑走をウェーデルンと呼ぶことにします。 左図は、1秒に1回以上のタイミングでターンを繰り返すウェーデルンを想定したものです。 左右の振り幅が4メートル、半径が2メートルのターンだとすると、滑走速度はおよそ44キロメートルほどになります。このくらいの切換えタイミングのウェーデルンだと、左図のようにスキーヤーの顔と肩はほぼずっと真下を見たままで、腰から下、とくに膝から下のひねり込みで回旋していることがわかります。 1秒に1回以上の切換えのウェーデルンでは、顔や肩を回すことはできません。回すと姿勢を戻すために時間がかかり、切換えタイミングはもっとずっと遅くなってしまうでしょう。 このようにそこそこ速いウェーデルンをするためには、相当に大きな落下速度も必要ですから、斜度は18~20°以上の急斜面となるでしょう。 エッジングでは不可避的にブレーキがかかるので、速度を保つためにはそれだけ重力加速度gが必要ですから、たとえば斜度φ°の斜面で直滑降した場合、滑り出してからt秒後の速度vは、 v=gtsinφ となります。 エッジによる摩擦制動率をλとすると、 v= (1-λ)gtsinφ となります。 このような関係式と経験から、ウェーデルンのターンのタイミングと斜度との関係を割り出すこともできます。 そして、ターン弧が正弦曲線または円弧の集合からなるものとすると、この関係式から微積分によって、真下への滑走速度は、√2分の1、およそ70%となることが導き出せます。上記のように、滑走時速44キロメートルでウェーデルンすると、真下方向への速度はおよそ時速31キロメートルほどになります。 これは最低限度の速さですから、ウェーデルンでは滑走速度は時速50キロメートル以上で真下への運動は時速35キロメートル以上にはなるはずです。これに耐える筋力や反射能力が必要ですから、ウェーデルンを習得するためには、日常の訓練が必要です。 ビルの10階までなら、エレヴェイターを使わず歩いて昇り降りするとか程度の運動は最低限度必要です。その歩き方も、肩や腰が膝よりも遅れないように歩くとか、膝の向こう脛を意識し、足裏の母指球から土踏まずの線に加重して歩くというような訓練を兼ねた歩行方法で。緩い坂でのダッシュもいいでしょう。 スキー場に暮らしているわけではない人がスキーを上達するためには、基礎体力とともに日頃の(体さばきの)イメイジトレイニングが大事です。 ウェーデルンのイメイジを示した左側のイラストは、いわば完成された姿です。 プルークターンまで習得したとしても、いきなりそういうウェーデルンにまで進むことは難しいでしょう。 そこで、段階的に技術を習得していきます。 まずはじめに、パラレルターンで学んだ踏み換えエッジングの交互操作のタイミングをどんどん速くしていって、3秒に1回くらいから2秒に1回、さらに1秒に1回くらいにまでもっていく方法を学びます。 |
踏み換えエッジングの交互操作によるウェーデルン |
ステップの横の動き幅は50センチメートル前後くらい。タイミングを速くすると、この幅は狭くなっていく。 |
踏み換え交互操作のウェーデルン交互操作によるウェーデルンでは、左へのターンの場合には素早く右スキーのインサイドエッジに踏み込んでターンをおこない(そのさい左スキーはわずかに浮かす)、次いで左スキーのインサイドエッジに踏み込んで反対向きのターンをおこない(そのさい右スキーはわずかに浮かす)、このあとこの交互操作を繰り返します。スキー場での練習も大切ですが、左図の交互操作によるエッジングの切換え動作を、室内で(ストックやブーツなしで)素早く繰り返す運動をおこなって、身体運動とタイミングのイメイジをトレイニングしましょう。 タイミングの取り方をイメイジしながらストックワークの仕方を習得します。踏み換えステップで左足が床に突くのと同じタイミングで右ストックを突く、右足が床に突くのと同じタイミングで左ストックを突く、というタイミングを習得しましょう。 そのイメイジを強く頭に焼付けてから雪面ゲレンデで練習します。イメイジトレイニングなしでいきなり雪面に出ても、おそらく上達は見込めません。というのも、雪面での運動は室内よりもはるかに難しいので、まして室内でのイメイジトレイニングなしで雪面練習しては成功するはずもないのです。 この方法を習得すると、1秒に1回のターンまではいくことができるはずです。しかし、普通の人はそれ以上に速くターンすることはできないでしょう。そこで次の段階に進みます。 なお、踏み換えステップの高度な応用技術がすてステップターンです。これは、後で学ぶことになります。 |
両スキー同時操作のウェーデルンさらに素早くターンの切換えをおこなう滑り方が、両スキー同時操作によるターンのウェーデルンです。室内練習では、上図のように左右両足をそろえたままで左右横にステップします。足を上下させて交互踏み換えをおこなう時間が要らないので、ステップのタイミングは交互操作よりも格段に速くなります。 |
同時操作のウェーデルンの難しさは、両スキーをそろえて同時にエッジングの切換えをおこなうことです。指導員クラスでも、「同時操作のウェーデルンをやってみなさい」と言われてすぐできた人は100人に1人もいないのではないでしょうか。 意地悪な言い方ですが、この段階では、交互操作のウェーデルンを何千回も練習すれば、やがてできるようになるはずです、としか言いようがありません。 |
しかし、それではスキー練習法の解説記事にはなりませんので、さらに発展的な段階まで進むことで、難問をクリアするしかないでしょう。 ここでは、交互操作のウェーデルンを何千回も練習することの大切さを呼びかけておきたいと思います。 |
8 ステップターン Stepschwung |
ステップターンのシュプール |
スケイティングステップ前編の初級のステップ歩行の項で前開きステップ歩行(スケイティング・ステップを学びましたが、ここではそれをもっと能動的に速い滑走移動方法として学びます。そこで「スケイティングステップ」と「・」を入れない名称とします。これはノルディックスキーの最も主要な走法のひとつです。 水平な雪原で繰り返して練習してください。面白くない滑りですが、上級者になるための体力やバランス感覚を磨くための方法だと割り切ってください。 ステップターンは、このスケイティングステップをターンに取り入れて、アグレッシヴなパラレルターン(ロングターンやミドルターン)をおこなうためのテクニックです。 能動的な乗り込みでステップターンパラレルターンの踏み換えのときに、次のターンの外スキーに飛び込むように能動的にステップしていくということです。そのさいに、反対側のスキーを踏み込みのための軸足として使います。つまり、踏み蹴りながら、インサイドエッジに加圧するように、外スキーに乗り込んでいくということになります。乗り遅れないように、重心を思い切って移すことがポイントになります。その瞬間には姿勢が不安定になりがちですから、バランス感覚も研ぎ澄ます必要があります。 通常の歩行や走りと同じように、踏み出す脚の反対側の腕を前に突き出してストックを突きます。このとき、両腕(ストック)を前に突き出すことで、上体を前に動かして、後ろ重心や後傾にならないようにするのもいいでしょう。 踏み込んだ後体重を移動させて乗り込んでしまったら、反対側のスキーを素早く引き寄せてパラレル姿勢を迅速に回復させます。 だいたい、このステップターンくらいまでが、現在のSAJ検定1級合格までのカリキュラムではないかと思います。1級は中級の卒業、上級への入学試験(入り口)とも言えるものです。 したがって、ここから先は、1級レヴェルを越えて、本当の上級者になっていく訓練です。1級を取得してからも学ぶべきことは山ほどあります。 おそらく現在でも1級の受験資格として検定2級合格(2級保持)が条件となっていると思います。2級から受験することになります。検定を申し込むと午前中は受験科目・内容の講習をおこなうはずです。午後が試験です。 少し費用はかかりますが、2級または1級受験希望ということで、スキー学校の講習を受けてみるといいでしょう。自分の弱点が把握でき、検定までに補強することができます。 |
ステップターンのイメイジ |
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