バス停から西ほぼ向きに石畳の参道が山に向かって伸びています。この参道をまっすぐに行くと、最初に訪れることになるのが常楽寺です。
参道に足を踏み出すと、すぐに山の斜面に沿って登る石段が見えてくきます。石段は、常楽寺に詣 でる参道の終点にあります。
◆唐様建築の本堂◆
石段を登り切ると、端正に手入れされた庭園があって、その向こうに萱葺きの本堂が見えます。
屋根の傾斜は、上に向かって膨らんだ「むくり」を帯び ています。「むくり」は屋根の下側の「そり」と相まって、風雅な調和を見せています。萱葺き屋根の頂部は瓦葺きです。
この大きな屋根の正面中央には、これまた萱葺きの唐破風がしつらえられていて、本堂の入り口となっています。
先年の「平成の改築」で、本堂の造りを創建の頃の様式に戻したということです。
萱葺きの唐破風というのは非常に古い造りで、宋代中国の禅宗様式と和様式との融合らしい。寺が平安期のはじめ(825年頃)に開基されたという歴史を物語っています。
▲境内の池の蓮は6月半ばから咲き始める
◆古い由緒と高い格式◆
その当時、常楽寺は「別所三楽寺」の1つとして造られたといわれています。
三楽寺とは、常楽寺、長楽寺、安楽寺のことで、北向観音と結びついて発足、発展したようです。北向き観音を鎮護したであろう長楽寺は今はなく、そ の役割は常楽寺に引き継がれたということです。
これらの寺院は古くから歴史があって、いずれも非常に格式が高く、鎌倉時代には日本でも最高の仏教研究機関だったといわれています。
その格式と伝統は現在にも受け継がれていて、常楽寺は天台宗の「別格本山」の位置づけを与えられています。この寺の大僧正は、先頃、天台宗総本山の座主に任じられています。
境内には国の重要文化財、石造の多宝塔があります。そして、由緒ある美術品や文物を保存した美術館も併設されています。
さて、常楽寺の境内を出てすぐ西側(常楽寺の駐車場の上)には、なにやらゆかしい風情の茶店があります。この茶店の庭からの眺めはすばらしい。別所 温泉街や北向観音、塩田平を一望できます【写真下】。
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