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長野県大町市
 
 
「ぬるめ」の農村風景

  上原は、高瀬川の支流である篭川と鹿島川がつくり出した複合扇状地です。扇状地は南東に向かって緩やかに下りながら広がって、大町市街にいたります。
  後立山の山脈から長く張り出した尾根が、上原の扇状地を北・西・南三方から取り囲んでいます。この辺りが水田地帯として開拓開墾される以前には、山岳から続く広大な原生森林が地表をおおい尽くしていたことでしょう。


▲温水路末端にある「わっぱらんど」の看板と「上原温水路」の石碑

▲上原の農村風景

▲田植えの水田に山々が影を落としている

  上原の農村風景を写した上の2枚の写真は、それぞれ水田地帯の南側と西側に迫る山並みをとらえています。田植えを終えた後の豊かな稲作地帯の5月下旬の風景です。上原温水路が供給する豊かな水が水田を潤しているのです。

■「ぬるめ」が支える田園風景■

  さて、300メートルの蛇行する幅広で浅い水路を流れることで水温はどれくらい高まるのでしょうか。長野県北アルプス地域振興局のホームページでは、水路の入り口と出口とで水温を測ったところ、15℃から17℃まで上昇したという結果が報告されています。
  なんだ、たったの2℃しか温まらないのか、と思うかもしれません。しかし、《長さ300メートル×平均幅17メートル×幅深さ0.1メートル》の概算で、510立方メートル、つまりおよそ510トンもの水量が2℃水温上昇するのですから、充分に効果あるといえます。カロリー熱量計算をすると、5.10×102×106×2℃=10.20×108 ということで、およそ10億カロリー(1,000万キロカロリー)の熱量が温水路で加えられたのです。

  ここで、水路の形について説明しましょう。概略図参照
  水門から細い水路を通過した水は、扇を70°くらいに広げた形で広がります。広がったところで3本の仕切りによって4つの並行する流路に分かれますが、10メートルほどで2本ずつが合流します。そのさい、水水路の幅は少しすぼまりまがら、およそ150°ほどの角度で右に曲がります。


滝の外側の岸辺の樹林


▲石垣で補強された滝


▲草原の奥には樹林が広がる

  そして50メートルほど進むと、今度は左に約120°ほど左に曲がり、30メートルほど先で滝を起点にして大きくだいたい270°ほどの角度でさらに左に急転します。ヘアピン状のカーブ、ここで流色の向きは逆転し東向きになります。ここまでの蛇行部分で3つの滝が設けられています。
  そしてわずかに右に曲がりながら40メートルも進むと、こんどは右におよそ直角に近いほど旋回し、曲がり切ったところで南向きの流れとなります。すると、今度はだいたい90°ほど左に曲がります。ここまでに2つの滝が設けられています。水路はそのまま東向きに進んで終点となります。

  「上原ぬるめ」の歩き方について、私のおススメは、水路の末端から流れを走行する形で岸辺の草原を歩いて、水門までたどり、今度は水路の対岸を歩いて終点まで戻ってくるという散策です。
  夏場に行くなら、濡れてもいい履物で流れのなかに入って水路を渡ってみるのもいいかもしれません。


▲屈曲直後に滝が控えている


▲東に水路が曲がるとまたまた滝

水路の終点:ここから水田地帯に水が流れ出る


用水路と農道


民家の庭のヤマツツジ

  水路の末端から道路の下を暗渠でくぐって、用水は水田地帯に流れ下ってきます。戦後に県の事業として計画的に開拓されたため水田は、どれも面積が大きく形長方形に整っています。


基地小屋を過ぎてまもなく水路は左に旋回する

そして奇妙な形の「あずまや」の前でさらに左に回り込む

「あずまや」の下流から水路を振り返る

急旋回の起点に滝が設けられていて、流速を上げずに落差を通過する

滝を挟んでヘアピンのように曲がっていく

この湾曲で水流はほぼ逆向きになるが、大らかな印象

水流のコース分けは水深や流速を平均化するためだろうか

岸辺の高さも低く抑えられていて、水への近さ、親近性がはかられている。

岸辺の草原から簡単に水路に降りることができる

東向きから南転する水路

音を立てて流れ落ちる水

ここで水路は東向きになる

水路の終点近くから振り返る

上原温水路(ぬるめ)概略絵図

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