車屋坂の上から、ゆっくり街並みの様子を見て歩きましょう。
ここでは、個々の店舗の表情・個性に注目することにします。馬籠宿の街並み景観には、ひとまとまりのコンセプトがあるようです。
各店舗の店構えや商品展示など、つまり店の見せ方は、景観のコンセプトに調和しているようです。
それは、各店舗の個性的な表情から街並み景観全体のイメージができあがっているということでもあります。
ことに馬籠では、街並み家屋の造り・建築様式がきわめて多様です。奈良井宿が、全体として、板葺き屋根の出梁町家造りからなっているのとは、非常に対照的です。
それはまた、昭和期の歴史における馬籠の独特の個性を表しているともいえます。「観光開発=商業化」がかなり進んだ局面にあるということなのでしょう。
ほとんど家屋が瓦屋根になっているのも、生活の「現代化」を進め、屋根の耐久性の向上・経済化を進めた結果ともいえるでしょう。
同じ木曽路のなかでも、宿場街ごとに観光経済への対応の仕方の選択に個性というか、幅があるということです。
その意味では、馬籠宿には、家の造りも含めて各店舗ごとの多様な個性・見せ方を観察する面白さがあります。
◆店舗の個性が街をつくる◆
さて、店舗ごとの造りや見せ方を観察しましょう。
出梁の町家造りをそのまま利用した店舗もあります。基本は町家造りなのですが、出梁づくりではない建物も多いようです。
家屋の両袖に「うだつ」をしつらえた店舗もあります。うだつを設置するためには、2階部分は1階よりも奥に引っ込める必要があります。そこで、出梁つくりとは異なる建築になるわけです。
また、土蔵造りの建築様式の店舗もあります。蔵という建物は、懐かしい日本の姿をイメージさせる効果があります。
【写真上】 懐かしい形のポスト。馬籠郵便局は郵便制度の歴史をめぐるギャラリーにもなっている。
街道と宿駅=駅伝という制度は、古い形の郵便の制度でもあったから、いかにも似つかわしい。
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