【写真下2点】 店舗のなかの様子 外から見える建物の形だけでなく、むしろ店のなかの見せ方こそ大事な個性の表現かもしれません。
■写真上■ 広い店舗にゆったりと商品を配置する方式。槌馬屋の2階は資料館(史料展示)になっている。 ■写真下■ 小さなスペースに素朴な味わいの丸太木材を台にしたテーブル。コンパクトだが、狭苦しさを感じさせない。
店の内部ものぞいてみたのが、上の写真です。 空間の活かし方や個性や趣の出し方にも、工夫があります。
⇒馬籠宿全体の絵地図を見る ⇒木曾路全図(シンプル版絵地図)を見る
歴史的景観を保存した街並みは、それ自体が歴史博物館ないしはギャラリーともいうべき存在です。 店舗の外観や建築様式それ自体が、伝統や歴史を物語っています。 それだけではなく、店のなかに置いてある備品や家具、什器なども骨董的価値をもつ民芸品・工芸品であったりします。 木曾路の宿場街の食事処・茶房、土産品店に入ってみると、室内に今ではとうてい入手できない希少・貴重な木工品・漆器などの工芸品(非売品)が置いてあったりします。 馬籠には、木曾路のなかでも、街の規模からみるとかなり多くの博物館・資料館・ギャラリーがあります。そして、普通の店舗でも内部がギャラリー仕立てになっています 記念館や資料館、ギャラリーなどと銘打っているだけでも、藤村記念館、脇本陣史料館、槌馬屋史料館、清水屋資料館があります。 大黒屋では店内に史料ギャラリーがあります。
今では茶房・食事処となっている大黒屋(大脇家)は、本来が造り酒屋で、大脇家の10代目、兵衛門が残した膨大な日誌が、藤村の『夜明け前』の物語と時代設定の土台となったといいます。兵衛門は、この小説で「伏見屋金兵衛」として登場します。 そして、造り酒屋だった歴史の名残として、今でも軒下に大きな杉玉が飾られています。杉玉は毎年「新酒の仕込み」のときに、新しいものに取り換えられるのです。 槌馬屋島崎家は宿の庄屋だったため、豊富な行政関係の史料が残されています。 また、清水屋原家の8代目は、藤村の『嵐』の「森さん」のモデルだとか。 ところで、ギャラリーや資料館そのものも経営体で、基本的に店舗や企業と同じだといえます。 しかも、歴史を誇る有力な店舗・企業が、街の文化や歴史をアピールする大事な事業としてこうした施設を運営しています。観光ビジネスと文化は一体化しているのです。 古い街並みや伝統文化を観光資源としているのですから、それが当然なのかもしれませんが。
木曾路・奈良井の心に残る風景写真を特集
| 前の記事に戻る | 次の記事を見る |