整った形の「石畳の街道」と家屋の土台を支える「石垣」。こうした硬質のイメージを和らげる前庭や植栽。
そして、急な坂という地形がもたらす階段状の家並み(家いえの段差・高低差)は、街筋にユニークな立体感と奥行きを与えます。
石畳の坂道は、緩やかに曲がっている。カーブの先の家並みは見えないから、街歩きの楽しみが増します。
次には、どんな景観に出会うのだろうか、という期待を抱かせます。
◆不規則さが生む趣◆
曲がりに沿って家の配置は、ずれていきます。そこには変化の律動があります。
それだけではありません。馬籠の街道沿いの家屋は、街道がまっすぐでも、それぞれに道との空き具合が異なっているのです。
こうして街道と家屋とのあいだの空間には凸凹の出入りがあります。
そのうえ、庭や植栽がなくても、店舗の道側の位置はまちまちです。
普通なら「雑然として印象」を与えるであろう、こういう変化に富んだ街並みの造りが、馬籠では道沿いの植物と相まって、石畳と石垣の硬質のイメージを温かいものに変えているのです。
これに、町家の建築様式の多様性が加わって、宿場街としての親しみやすさを伝えているような気がします。
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