▲谷間の花桃の背景には尾根が迫る
信州の中央部北側にある美ケ原高原は、信濃川の犀川水系と千曲川水系を隔てる小分水嶺となっていて、その東麓の尾根を下る幾筋もの水流は、最終的にことごとく千曲川に流れ込みます。そういう水流のひとつが余里川で、武石川の支流のひとつです。武石川は余里地区の東側の尾根の麓で依田川に合流します。
上田市武石(旧武石村)は松本と上田の中間、美ケ原高原の東側山麓にあって、高原から延びるいくつもの尾根に挟まれた谷間の集落が集まる地方です。
そのなかでも余里地区は、美ケ原高原から続く尾根のうち一番東側の尾根の西側の谷間に位置する村です。
南北5キロメートルにわたって伸びる狭い谷間は標高750~900メートルほどで、地区の南にそびえる余里峠を越えると中山道和田宿にいたります。
▲棚田が続く谷の東端に並ぶ花桃
余里の谷は楔形で、南端の山腹斜面から北へと下る斜面をなしています。谷の南側には狭い谷間が続き、やがて北に向かって谷の幅が広がっていきます。そこに無数の段々畑や棚田が並んでいます。
そんな谷間を余里川は西に東に蛇行しながら流れ下り、今回取材した下流部では谷の東端に寄って流れていきます。およそ2000本の花桃は、およそ4キロメートルにわたって主に余里川の河畔に沿って植えられています。
▲右手谷底には余里川が流れる
その花桃を植え丹精込めて世話していりのは、地元の「花咲じいさんクラブ」の皆さんです。
花の色は大雑把に分けて3色、白、紅、桃色です。中国古代の古典に陶淵明の『桃花源記』――桃の花が咲くユートピアに旅する物語――があります。その夢の里は桃源郷と呼ばれていますが、ここは現代の桃源郷です。
▲うららかな春の陽を浴びる散策路
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