旧和田村の中山道沿いの景観は、ことに高度経済成長とともに大きく変わりました。それでも、街道を歩いてみると、そこかしこに往時を想像するのに役立つ家並みや道の姿が残されています。
そんな風景を求めながら信州東部の中山道の旅を続けることにしましょう。
さて、和田峠を下り切り、唐沢集落を経て牛宿バス停を過ぎてから400メートルほど進むと、中山道は国道142号から右に逸れて、狭い旧道に入ります。この道は大出集落を通るので、大出旧道と呼ばれています。
私は和田峠をようやく越えてきたその昔の旅人の気分になって、この旧道を通って和田宿をめざして北に歩いてみることにしました。
この街道の東脇を流れるのが依田川で、長久保宿の手前まで中山道の横を並走していて、中山道と別れた後は、依田窪を抜け丸子を経て千曲川に合流します。
和田峠山頂部から和田宿を経て長久保宿まで、中山道は依田川が侵食してつくり出した谷間を往くことになります。
▲大出旧道の東脇を流れる依田川
◆大出集落を歩く◆
大出街道の道幅は2メートルはあります。集落の住宅は往時よりも後退して、道路は拡幅されています。それでも、道筋は往時の面影を残しています。
住宅敷地の区画は、往時の集落の家並をかなり残しているようです。大出地区は農村集落ですが、家の並びは古典的な街並みに近く、その意味では、旧街道筋ということが、家屋の配置など集落の形状に大きな影響をおよぼしてきたようです。
とはいえ、集落の周囲を山岳と田園風景が取り巻いています。
▲周囲は山並みに囲まれた田園地帯
私は、こういう街道沿いの農村集落の風景がことのほか気に入っています。街道を通じて外部の大きな世界と結びついて、その影響を受けながら農耕と商売を両立させてきた、日本の伝統的な豊かさが感じられるからです。
信州の中山道めぐりは、そんな風景を探し求めての旅だともいえます。
▲農村なのに都市集落のような景観
下の写真は、長和町の循環バスの停留所です。和田宿の近辺には、こんな茅葺古民家風のバス停がいくつもあります。建築と維持に相当お金がかかるでしょうが、中山道沿いには似つかわしい郷愁を誘う景観です。
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