ごく大雑把に言うと、奈良井川は、木曽駒ケ岳山頂と奈良井宿を結ぶ線の東側の斜面にあって山脈から東に流れ下る水系が集まってできている河川だ。
奈良井川の流れを追いかけるためには、伊那市から権兵衛街道を辿ればいい。権兵衛トンネルを抜けて番所トンネルを過ぎ、羽淵トンネルを出たところで右折すると、急峻な山肌にへばりついた道に入る。車は左側に深い谷底を見ながら走ることになる。
番所トンネルの分岐から約7キロメートルで奈良井ダムにいたり、10キロメートルほどで奈良井宿に到達する。
奈良井ダムは、分厚い堰堤のように岩石を積み上げてつくられたロックフィル式のダムだ。深い谷間に集められた渓流はダムで堰き止められ、豊かな水量のダム湖をつくっている。
このダム湖は、奈良井宿の約3キロメートルほど南(上流)にある。ダム湖に集められた水は、取水口〜放水路を経て北向きに少しずつ流れ落ちて、奈良井川の渓流をつくる。
▲奈良井ダムの放水路
奈良井川は宿の手前で大きく右に曲がって、向きを北東に変える。そして、そのまま峡谷を流れ下りながら周囲の山々から豊富な水を集めて、塩尻に達する。
川筋はさらに北に流れ下って松本平で梓川などと合流して犀川となる。犀川は松本平を出ると、さらに山峡を流れ下って、善光寺平で千曲川と合流する。
千曲川は信濃の国境を出ると信濃川と呼ばれ、越後の広大な平原をゆったり流れて新潟平野で日本海に注ぎ出る。
こうして、奈良井川は日本の名だたる大河の源泉となっている。
塩尻から奈良井までは奈良井側を遡上する旅となる。奈良井宿は、この奈良井川に沿ってつくられ、南西から北東に伸びる街筋をなしている。
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