◆「和風の美」をひときわ美しく感じるのは、なぜだろう◆
奈良井探訪の楽しみは、まさに歴史的景観としての街並みを眺め、その光景のなかにわが身を置いてみることに尽きる。
私たちが街並みを見て落ち着いた気分になり、安らぎや癒しを覚えるのはなぜだろうか。
理由はわからないが、私たちの心の深いところに蓄積している歴史記憶とか潜在意識となった伝承文化のせいではないだろうか。
▲ふれあい広場から見た木曾の大橋
木曾の大橋に使われている木材はすべて檜で、日本古来の伝統的な工法でつくられているという。⇒木曾の大橋の写真記事を見る
橋を渡ると、駐車場だけの「道の駅」がある。国道19号線から直接入ることができる。しかし、道の駅にはほかに施設や店舗はない。
街並み全体がテーマパークとなっているような道の駅となっているともいえる。道の駅は木曾路の奈良井宿への入口なのだ。
ヴォランティアで街並み案内をしてくれたおじさんの話では、奈良井で観光業・店舗行に携わっているのは、住民の約2割だという。
8割の住民たちは、一般企業や団体、学校、自治体などに勤めたり通学したりしているのだ。
そして、その8割の住民たちが、統一的なコンセプトによる街並みづくりに協力していることになる。一般住民あっての奈良井の歴史的景観なのだ。
普通の生活感覚からすると、「現代風」の造りの住宅に暮らす方が、快適で便利だと感じるのだろうが、目先の快適さや便利さよりも、歴史的景観を守り形成し続けようという心意気やよし。
これこそ「粋」「センスの良さ」だ。
そういう粋やセンスが、この町ではどこでも当たり前のコモンセンスになっている。それが、「伝統の厚み」を形づくっている。
▲晩秋の奈良井宿
|