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長野県上田市塩田
      
三重塔を眺める  

  前山寺を訪れる楽しみのひとつは、並木の下の石畳の参道を歩くことです。
  三重塔だけでなく、参道の風景や山水庭園など、見どころはいくつもあります。

春の参道

▲春の陽射しを受けた参道
  春が遅い塩田盆地では、4月下旬に梅やレンギョウの花が満開を迎え、桜、そして藤の花が続きます。三重塔を取り巻く花も次つぎと交代していきます。
  春の花の季節に続いて若葉の季節がやって来ます。やがて、アジサイの花が咲き、山林が深い緑に覆われるようになります。

《塩田平をめぐる旅》のなかの前山寺の記事を見る

■山腹の樹林に取り巻かれた塔■

  門外漢の印象ですが、上田盆地にある大法寺信濃国分寺、前山寺の三重塔は造りがよく似ています。
  この3つの塔は、大法寺の塔が最も古く、大坂天王寺(四天王寺)の宮大工が直接手がけたもので、その意匠(設計思想)が国分寺の塔に引き継がれたようです。
  前山寺の三重塔は、この2つの塔の意匠を受け継いだ形ではないかと思われます。

  塔の本体(身舎)は細身で屋根庇(裳階)の平面積を大きく取っていること。第一層の屋根庇を大きくして躍動感や立体感を強調する造りになっていること。
  これらが共通点として認められます。地理的に3つが近いことで、上田・塩田に共通の塔意匠があるような気がします。

◆「未完の美」が完成させた意匠◆

  3つの塔のなかで建立年代が一番新しいのですが、前山寺の塔は、いわば「意匠の原型」を表現しているように見えます。
  とういうのは、ここの三重塔は未完成であるため、回廊や勾欄(欄干)などの装飾がないからです。
  装飾が施されなかったことで、かえって塔の意匠の原型が直截に現れているのです。これはこれで、独特の美の典型をなしているのです。

  そして、庇の四角に張り出した貫材は、塔の建築構造が支えている力学的動勢を表しています。それだけでなく、塔の内部から放出された光のようにも見え、仏舎利塔にふさわしい風格を与えています【写真下】。

未完成の塔
▲組みっ放しの貫材が力強く動勢を表す

◆周囲の環境に溶け合う姿◆

  境内の山水庭園が周囲の自然環境に溶け込んでいるとすれば、塔もまた樹木に取り巻かれて独特の美しい景観を構成しています。
  ここでは、樹林の姿の季節ごとの変遷のなかに三重塔の光景を位置づけてみました。晩冬、初春、春爛漫の頃、初夏、晩秋と。

  ところで、前山寺の三重塔の水煙も独特です。安楽寺の塔の水煙と比べると、火炎のデザインから方形の枠に囲まれた様式に抽象化されています【写真下】。

春の三重塔
初春には木々の枝葉に遮られずに塔を観望できる
墓苑から眺める塔
塔の上は墓苑、周囲は山林。桜開花直前の頃
桜花咲く頃
願わくは、花の下にて…春の塔
藤の葉が繁る頃
初夏には若葉に覆われる
梅雨期の三重塔
垂れこめた雨雲の隙間からさす陽射し
晩秋の仏塔
晩秋の陽射しを浴びて…

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