▲棚田のなかの道をのぼり続ける
今回は、「まるや」や「つたむら」が軒を連ねる旅籠集落の裏手の坂道をのぼって、さらに上の集落を訪ねてみます。
この集落には、信州で最古クラスの平屋で板葺の古民家が保存されています。藤原家住宅と呼ばれています。その建築様式は一応、本棟造りのカテゴリーですが、本格的な本棟造りへの過渡期の様式です。
▲藤原家にはかわいい猫たちがいる
この古民家は貴重な文化財・歴史遺産として県宝に指定され保存されているので、藤原家は隣に別棟の住居を設けています。海老茶の屋根の和風入母屋造りの伝統を踏襲した現代建築です。
庭越しに写真撮影していると、住居棟主屋の縁側から三毛猫が出てきて、軒下の箱の上に乗って挨拶してくれました。
▲等高線に沿って細長い棚田
さて、この集落は、山の峰の下に広がる段丘上の斜面にあります。したがって、旅籠集落から段丘までのぼる道は急坂なのですが、段丘上は比較的に緩やかな斜面です。そのため、江戸時代でも下の集落に較べると棚田の開墾がずっと容易であったと見られます。降水量も信州では多い方なので、灌漑用水も山頂下からの湧き水でまかなえたようです。
そこで、江戸時代前期に下の大妻籠集落あるいは妻籠や馬籠から開拓農民がここに来て、農地の開拓開墾をしたのでしょう。
田圃は等高線に沿った細長い長方形(条圃)にして、耕作面積を広げ、効率的な稲作を可能にしています。棚田の形状を見たい人は、上掲のGoogleマップを開いて拡大画面にしてから、画面中の「航空写真」をクリックしてみてください。
しかし今、棚田の多くが休耕ないし耕作放棄状態になりつつあるようです。
この日お会いした老婦人によると、大妻籠では十数年前までは、多くの住民が古民家を活用して民宿を営んでいたが、高齢化で廃業してしまったそうです。集落の維持と古民家の保存のために対策を考えるべき時期が来ているようです。
▲八剱神社の大枝垂桜と社殿(蓋殿)
▲神社の最上壇からの眺め
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