町家からなる街並みは、ひとまとまりのイメージ(構想)で統一されている。
◆形と色調の調和◆
たいがいの町家の屋根は通り側に向かって傾斜し、深い軒が道側にせり出している。
多くの町家は、道側に格子(格子の引違戸や格子枠)が据えつけてある。
店舗以外の一般住宅は、格子のなかにアルミサッシュのガラス窓になっている場合が多いのだが、目の細かい格子によって、ほぼ同じ外観に見える。
観光地なので、檜細工や曲げ物、漆工芸品、木工・蔓細工などのみやげ物、特産物を陳列しやすいように、古風なガラス戸にしてある店も多い。
そんな街並みが調和の取れた美しさとしっとりとした落ち着きを感じさせるのは、1つの都市集落としての街並みのまとまり、ほどよい統一性、一体感があるせいだ。
もちろん、家の造りの基本(形)が同じであることは、最大の要因だろう。
だが、形状の共通性や近似性に加えて、街並みの色調が統一されているのも、整合性の大きな要因だ。
黒味を帯びた濃茶、暗褐色、あるいは茶褐色に塗られた格子戸や窓枠、板壁や柱、屋根・・・。
◆抑制のきいた店舗・商品展示◆
商品展示のためにガラス戸にしている店舗でも、突出して目立つことを極力避けて、枠や桟、そして格子は黒味を帯びた濃茶だ。
室内では、外から見えるところは街並みコンセプトに合わせたデザインになっていて余計な照明を点灯していないので、ガラス戸越しの奥の色合いは暗褐色の外装と調和している。
商品の展示はごく控え目だ。派手な色や出しゃばったところがない。
街並みのデザイン・コンセプトに合わせて抑制された展示・見せ方は、奥ゆかしく、生業に品位と格調を与えている。
これ見よがしの出しゃばったディスプレイが幅を利かせている日本のなかで、ここでは、高い品格と自己抑制こそが、訪問者に深い信頼感と好印象を与えている。
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