試しに、パラソルの下にテーブルが並んでいるオープンカフェなんかに立ち寄ってみればいい。
店のサービス係はしばらくやって来ない。
そのテーブルで、ほかの店で買ってきたお菓子やパン、飲み物や弁当を食べても構わない。
しばらくして、間違いなく自分の店のサービスを求めていると見極めてから、やってくる。
別に注文しないで、周囲の景観を眺めていても構わないようだ。
「観光客は街全体のお客だ」という姿勢で、店は顧客を共有している。
自分の店が用意しても、テラスやオープンカフェは街の共有空間なのだ。分を知り、分を守り、それが街全体に活気を与える。
自分の店のお客を囲い込んで、売り上げを伸ばそうという姿勢はない。ますゆっくり街の景観を見て、雰囲気を味わってほしい、ということなのだろう。
訪れた人びとに「街が何を売り物にしているか」を知っているからだ。
■街を歩いてもらうことが何よりのサービス■
街歩きして、景観を楽しんでくれることが、一番のサービスなのだ。街を歩いてもらうことが、ねらいなのだ。
車で目当ての場所や店にピンポイントで行って帰る、というような安っぽい観光をめざしていない。
ユースホステル以外には、町にはさしたる宿泊施設やホテル、旅館もない。宿泊サービスは近隣のホテルや温泉街や旅館などに任せている。
だから、近隣の宿泊業者と競合することはない。
その分の設備投資はいらない。限られた資金は、もっと別の形で使うのだ。
もっぱら街の景観や雰囲気づくりを売り物にしている。街歩きとこれにともなうサービスに専念している。
それで、客は引きも切らずにやってくる。
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