小布施は、野菜や花、果樹の栽培が盛んな田園地帯だ。
街の周囲を、広大な田園が取り巻いている。東側には山岳が迫り、西には千曲川が流れる。
田園とは、人手が入って整えられた植生地帯である。
市街地や集落は、豊かな緑に取り巻かれている。田園や庭園、草や木は季節の移ろいに敏感に反応し、そしてそれをこまやかに反映する。
小布施は、そういう環境に合わせた巧みな街の見せ方を身につけてきた。
■大店が文化と景観の核になる■
典型的なのは、店舗や住居の建築様式である。
「小布施様式」とも呼べるような、家屋の形、色調、雰囲気を調和させ、街のイメージの「まとまり」ないし統一性を生みだし、形成してきた。
その動きには、地元の有力店舗・企業が大いに力を発揮したようだ。
この町には、小さな町にしては、酒造会社がいくつもある。
栗を原材料とした食品(たとえば栗菓子、栗おこわなど)の生産・販売を土台にして財をなした商家がいくつもある。
栗食品は、江戸時代あるいは明治期から続く伝統的な名物・特産物だ。それを生業にしている店舗あるいは酒蔵は、店舗のデザイン(家屋の形や庭園)やサー ビスの提供方法に、その歴史と伝統を盛り込んできた。
「和風の美」にこだわることだ。
■景観の調和とまとまり■
和風の美は、里山や田園の風景によく似合う。
現代の時代環境に伝統的な「和風の美」を生かす努力を重ねてきた。
そういう店や企業が、街の景観コンセプトづくりの中心となってきたようだ。
今風の基準で町の「市街地」といえる空間は、たかだか1キロメートル四方ほどしかない。そのうち「中心街」は500メートル四方くらいか。
ところが、住宅地や村落などの集落は町域全体に広がっていて田園に取り巻かれている。
そして、周囲の田園風景と市街地・中心街の景観は、ひとまとまりのイメージに調和している。
《里山風の庭園》という和の美のコンセプトの目で眺めたなら、中心街も周囲の住宅地や村落もそっくり含めて、町域全体がそっくり大きな《庭園》《 個性的な文化空間》をつくりあげているのだ。
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