私は昨年春(4月末)、大法寺界隈を取材して回りました。春になると、この寺に行ってみたくなるのです。
それから1年ちょっと経過し、今度は5月半ばに訪れました。ゆっくりやって来た春が急速に深まり、季節が駆け足で初夏に向かっていく、そんな光景を見てみたかったからです。
大法寺の観音堂と三重塔は、大きな谷のあいだに張り出した、南向きの小さな尾根の上にあります。
南には、下の谷を流れる浦野川を挟んで、夫神山の麓の集落(殿戸地区か)が遠望できます【写真下】。
ここは日当たりがよく、展望が南側に開けている、明るく開放感に満ちた場所です。ここに仏塔を建てた人びとの気持ちがわかるような気がします。
◆輝く若葉◆
春を待ちかねていた山の木々は、桜や梅の花の時期が過ぎると、若葉を一斉に萌えさせ、夏への準備を始めるかに見えます。
若葉の明るい緑、黄緑もまた、花と同じくらいに輝いているようです。
三重塔の袂まで登ってみました。ここでも、木々は競い合うように若葉を萌えさせています。輝くようなカエデの若葉を透かして、三重塔を眺めるのも風情があります。
ところが、右手のサルスベリはのんびり屋で、ようやく若葉の芽がほころび始めたばかりです。夏には、サルスベリの紅い花越しに仏塔を眺めることになるのでしょうか。
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