大法寺の三重塔の特有の結構がはっきりわかるように、接近して仰ぎ見ながら撮影したみました。それが右の画像です。
初層の面積の大きさが際立っています。しかも、造りは単純化されています。
基層の平面積が大きいということから、塔の安定性が見た目にも明白になります。
そして、そのことによって、人びとが塔を仰ぎ見るとき、上の層が初層に比べて小さく見え、そのことで、塔がひときわ高く見えるようになります。
安定性と高さの強調が同時に達成されているのです。構築性が際立った塔の結構なのです。
こうして、三重塔は、あたかも羽を広げた鳳凰の姿にも模せられるのです。美しさと力強さをこれほど見事に統合した意匠の巧みさ、建築技術には恐れ入ります。
このような結構は、ほかには奈良の興福寺の三重塔に見られるだけだといいます。
ところが、塔の中ほどの高さでよく見ると、初層は均衡を崩すほどに大きいわけではないのです【写真上を参照】。
下から仰ぎ見ることによる視覚効果を知り抜いたうえでの、設計思想なのでしょう。よほどに仏塔造りの経験・場数を踏んだ棟梁が考え出した意匠だと思われます。
塔の組物に墨書きされた記録によると、大阪市天王寺(天王寺)の小番匠7人が建築に携わったようです。
この意匠は、その後、再建された信濃国分寺の三重塔にも引き継がれたといわれています。
◆高水準の建築技法◆
右上と見横の写真(2点)は、裳階の構造を見るためのアングルから撮影したものです。
美しいリズムを描く垂木、そして大きな荷重を支えつつ、応力を分散する肘木の組み立て。力学的役割が見た目の美しさと両立しています。
裳階を支える肘木は、外側に張り出すように三重になっていて、広く外に張り出した庇の重さを受け止め分散しています。その組み方がまた美しさを醸しているのです。
さて、境内には古い由来の観音堂があります。そもそもは、平安末期に創建されたそうです。内部に安置された十一面観音像と脇座の普賢菩薩像は、ともに藤原中期の作で、材質はカツラだといいます。
これらの像を納めてある厨子・須弥壇も古く、室町初期に造られたものと見られています。
【写真上:裏手から見た等の構造】 意匠を見るために拡大した画像を見たい人は、写真をクリックしてください。 |