貞祥寺の参道は、丘陵を登る道で、森林のなかを往く小径です。登り口の石段を過ぎると、あとはかなり緩やかな坂になります。石段があるのは、片貝川が丘陵を侵食してつくった河岸段丘の急斜面にあたる場所なのでしょう。
石段を登り切った左手に古い民家風の建物があります。これは、島崎藤村が小諸義塾の教師をしていたときに小諸で住み暮らした家屋を移築したものです。今は、この地区の集会場――歌会やら同窓会などに利用――として使われているようです。
▲名物、銀杏の老大木。推定樹齢は450年だという。
▲銀杏の近くには、これまた450年の樹齢と推定される老杉
◆苔の森の息吹◆
境内めぐりは里山の森の散策です。茂みに種子から発芽したばかりの双葉を見つけることもあります。幼木や若い盛りの樹木もあれば、老大木も大切に保護されているようです。
▲老杉の幹に巻きつくようなモミジの若葉
仁王門と本堂、禅堂、知客寮などに囲まれた中庭は、人為を匂わす庭園となっていますが、そのほかは、自然林の味を残した里山風。
樹間の木漏れ日が落ちる場所には苔が育っています。
▲眩しい天空に伸びる塔
樹下の陰影と樹間からのぞく天空の眩しさのコントラスト。それが、貞祥寺の境内の森歩きの強い印象です。
【写真下】欝蒼とした木陰の池の水面は木漏れ日を浴びながら、鏡面のように明るい青空を映して輝いています。
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