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▼山門前のカエデの梢を見上げる
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▲南から眺めた三門
光前寺の取材に訪れたのは10月の中旬ですが、山門前のカエデの梢を見上げると、陽当たりの良い先端部の紅葉が始まっていました。深い山林で陽射しが遮られる境内では、あと2週間ほどするとカエデの紅葉が見られるでしょう。
三門をくぐると、左手(南側)に池があります。山林から湧き出た水をたたえた池で、満水時には三門から本堂のあいだに2本の腕のような水路を延ばしています。水路に囲まれた地面は岬のような形で、北側に弁天堂、南側の池の畔に十王堂が置かれています。
弁天堂は一群の杉の大木に囲まれていて、その西側のさらに奥には経蔵があります。経蔵も弁天堂と同じように巨木に取り囲まれていて、森はあたかも堂宇を守る衛兵のように屹立しています。
三門の南側には腰を敷いた参道が延びていて、池を迂回して本堂に向かう道筋がつくられています。この先の右手に三重塔があるのです。
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▲境内中央の大きな池 対岸に三重塔
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▲山腹の森からの流水が池に注ぐ
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▼壇上の経蔵
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▲池の畔の十王堂
◆本堂は背後の山に一体化◆
さて、三門を抜けてから、池から延びる2本の水路に架かる石橋を渡ると本堂にいたります。これは、池の北側を通って本堂に向かう道筋です。
本堂は、三門から2段上の壇上にあって、尾根の中腹の大地に鎮座しています。往古には、さらに山腹をのぼったところに本堂などの堂宇があったそうです。
本堂はいわば山を背負っていて、神仏習合の時代にはご神体としての山塊と里を結ぶ位置に本堂があったということになるのでしょう。本堂は、修験の場を標示する結界の象徴でもあったのでしょう。
境内で一番高い壇上にある本堂は、入母屋造で妻入の結構です。前面の向拝は唐破風の造りで、重厚感が印象的です。
本堂周りの壇上からは境内を一望でき、三門や経蔵、弁天堂、池、さらには三重塔も俯瞰するように眺めることができます。
背後の山林から流れ出てきた水は本堂の南側に池をなし、境内を縦横に流れる水路の一環をなしています。
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▲本堂脇から三重塔を眺める
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