Article in English
妻籠の街筋全体も素晴らしいのですが、私としては、古い家並みと町家の様子をとどめている寺下を歩くのが気に入りました。
木曾路の昔の姿を思い浮かべながら、街道を歩くのが楽しいのです。
寺下では、妻籠でもいち早く町家造りの家屋と街並み景観の保存が始められたということです。
上町や中町あたりの家屋の多くは、今では瓦屋根になっています。ところが、寺下では、多くの家屋がいまだに板葺きのまま保存されています。たぶん、この方が、屋根の葺き替えなどのメインテナンスが大変な手間になるでしょう。
そういう面倒を覚悟しても、往時の建築様式を保存するのには、住民のそれだけ深い覚悟とか粋な心づかいが必要だったでしょう。
木曾路の町家造りの特徴は、屋根だけにとどまりません。
道沿い側の造りとしては、蔀や大板戸、そして二階の梁の方が一階よりも道側に出ているの(出梁)が特徴です。
◆街並みと地形◆
Article in English
さて、寺下区を歩いてみましょう。
妻籠宿は、南北に走る街筋です。街の西側には蘭川が流れていて、その河川敷もあります。東側には山の斜面が迫っています。
尾又では、街道東側のいたるところに山腹や尾根の端が出張っています。そういうところには、家並みがつくれません。
尾又から寺下に来ると、ようやく道の両側に家並みが続くようになります。
けれども、家並みは100メートルも続かずに、光徳寺直下では、張り出した尾根=山腹が家並みをさえぎっています。
旧街道は、この尾根を避けて、西に回り込む形になっていました。この地形を利用して、江戸期には桝形が築かれていました。
今では、尾根を切通して、寺下に道路がつくられています。その結果、南から歩いてくると、下を往く旧街道と上を往く新道路がわずかな区間分岐することになります。
【写真上】寺の真下の道は、東側が切通し。
この分岐が、街筋に独特の趣を与えていて、私は好ましいと思います。
妻籠の街並みと地形を立体的に感じ取ることができるからです。
地形といえば、馬籠峠を下ってきた道は、寺下まで続きます。が、光徳寺の真下から上町、中町、下町にかけて、ふたたび登り続ける道になります。
「新しい道路」を北に歩むと、正面に、みごとに町家の妻面(横面)の造りを教えてくれるような配置の家屋があるではありませんか。この町家が上街の南端なのです。
⇒尾又から寺下までの街並みをもっと詳しく見る
|