■黒門と本丸庭園■
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12月10日に松本城の本丸を訪ねました。暖冬ですが、本丸とその周囲の落葉樹の葉はすっかりなくなっていて、外から本丸の姿がすっきり見渡せます。
天主はもちろん、小天主や櫓群、櫓門は黒漆が塗られた壁面(腰壁)や鎧戸・武者窓に覆われていて、黒や鼠色が主体です。市民から「烏城」と呼ばれるのもむベなるかな。
さて黒門から入場して桝形虎口を経て櫓門をくぐると、本丸庭園に出ます。庭園の芝生は何度かの霜を浴びて冬枯れています。
松本城の本丸庭園では、晩秋から冬支度が始まっていて、師走になると正月の準備が本格化します。樹木を積雪から守るための「雪吊り」の縄からなる円錐形がいくつも現れます。そして、芝生を囲む青竹の柵が組まれています。
そんなちょっぴり殺風景な本丸庭園に姫様装束の若い女性が現れました。深紅の傘をさして、金の刺繍で飾られた華やかな着物姿。
たちまちカメラマン(ほとんどは初老のおじさん)に取り囲まれました。この城でも、こんな風に入場者を手厚く歓迎してくれます。
■天主群に入る■
では、天主群の建物のなかに入ってみましょう。靴を脱いでスリッパに履き替えます。
建物内部は明かり取り窓もないためかなり暗くなっています。照明を頼りに狭い場内を歩くことになります。
松本城は無駄な空間がまったくない構造なので、各階層は急角度で上に伸びています。つまり、底面積のコンパクトさの割に天井が高いということになります。
その結果、重量と構造を支える柱――3階層くらいを貫いている――がやたらに多くて、階段が大変急勾配になります。
■鈍く輝く床面■
ところで、松本城の各階層の床面は、弱い光でも十分に光沢のある鈍い輝きを放っています。
これはすこぶる生き届いたメインテナンスによるものです。毎年、近隣の子どもたちが胡桃や柿の汁油脂に浸した布で、汚れを取りながら、まんべんなく磨いているからです。
木材繊維を保護するために最適な材料で洗浄・塗布を施しているのです。
千鳥破風の内側の造り
■五重六階の結構■
松本城は層塔式としては最古のものですが、望楼式の結構を残した過渡的な造りになっています。
外側からは五重に見えますが、破風がある第三〜四重の内部は複合三階になっているので、内部は六階の造りになっています。三階層の一番下の階は窓がないので暗いのですが、外部から遮蔽されているので武者溜り(家臣の集結所)になっています。
四階の回廊の内側は御座の間になっていて、天井が高くなっています。そこは非常時・戦時に領主がいる場所となるはずのものです。
■大天主最上階からの眺め■
大天主六階の窓からの視点は地上25メートルほどの高さにあります。
戦時にこの階は、重臣たちが結集し、最高所から周囲の地上の状況を見回しながら作戦を協議する場となります。軍略上の管制高地とするために、天主の高さが必要になるのです。
【写真】最上階の天上を見上げる
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