▲流路の畔の散策は楽しい。
牛伏川の源流部では斜面が険しく、まさに自然の猛々しさを実感しました。それでも、階段工の近くまで下りてくると、石組み構築によって自然の脅威を抑えて、穏和な谷間の景観を眺めることができます。
牛伏川上流部は親水遊歩施設となっているので、登山道や歩道が整備され、ところどころに休憩用の四阿が設けられているのです。
とはいえ、それというのも、流路の周囲だけでなく、谷間の中腹斜面まで石垣を組んで、浸食による地形の過度な変形や山腹の崩落をどうにか防いでいるからこそです。
そんな石垣の平坦部は歩くことができます。階段工の近くでは、右岸が草地を挟んで谷斜面で、左岸が緩やかな斜面に広がる樹林となっています。樹林には舗装された鉢伏山登山道が整備されています。
そこで、流路の近くを歩きたいなら右岸の石垣上を往き、森のなかを歩きたいなら左岸の登山道を往くことになります。カエデやミズナラ、コナラが主体の樹林は晩秋には錦繍に包まれます。
階段流路は連岳橋の少し上で終わります。
このあたりの左岸はやや平坦な樹林が広がっていて、「牛伏川いこいの広場」や駐車場、お手洗いがあります。ここにクルマを置いて休憩したり上流部を散策したりすることになります。
◆支流との合流部◆
最も危険な急峻な谷間は過ぎましたが、深い谷底に流れ落ちてくる水路がまだいくつもあります。
そういう小さな支流にも万全の対策が施してあります。滝のように流れ落ちてくる支流には、石垣堰堤を何段にも施して、流路を人工的な滝に組み換えてあります。
急傾斜の流れが長く続くと位置エネルギーが解放されて流速が増し、水流の破壊力も増していきます。そこで、階段状の石組みの滝をつくり水流を垂直に落下させて、水平方向の速度を失わせる必要が出てくるわけです。
支流の本流への合流部には石垣堰堤や石垣護岸を築いて、水流どうしの「衝突」にともなう衝撃に備えています。
これでもか、これでもかと幾重にも石組みや堰堤によって補強することで、崩壊や土石流を回避し、どうにか渓谷の美しい景観が維持されているのです。
▲連岳橋を過ぎると傾斜は緩やかになる
◆「水遊びの広場」◆
連岳橋よりも下流では谷底の斜面が平坦になって、流れもずっと穏やかになります。
というわけで、この平坦地は「水遊びの広場」となっています。天候が好ければ、小さな子どもたちでも安全に流れの畔で遊ぶことができます。
ほんの30メートルほどの長さですが、木の葉の舟をつくって流して遊ぶのもいいでしょう。
ゆっくりと周囲の山林を眺めて楽しむのもいいでしょう。
この広場から少し道路を下ると、牛伏川堰堤ダム湖を展望できる見晴台があります。
▲牛伏寺の下の道路で連岳橋までクルマでいくことができる
◆砂防堰堤ダム湖◆
▲砂防堰堤によってつくられたダム湖
「水遊びの広場」から500メートルほど下流に砂防用の巨大な堰堤(ダム)があります。。
土砂を沈殿させて上澄みの水を流し落とす堰堤です。そこからの眺望は、素晴らしく美しいものです。景観の美しさをアピールするために、この展望台を築いたのでしょう。
堰堤と下流の河床との高低差は目測で20メートルほどはありそうです。この巨大な砂防堰堤によって、膨大な水をたたえたダム湖が形成されています。
砂防ダム湖の少し上流には展望台があります。
牛伏川の渓谷は北西に向かって開けているので、うまい具合に松本市街とその奥の北アルプスを展望することができます。晴れていれば、ダムの真上に常念岳、左手に槍ヶ岳の秀峰、右手に大天井岳が見えるはずです。
砂防用の大きな堰堤はいつも満水状態になっていて、ダム湖に流れ込んだ分だけがつねに下流に落下放水されるようになっています。
大型堰堤の下にもう1つ堰堤があって、水をせき止め、滝壺のような貯水池をなしています。
▲堰堤の上縁は幅2m以上の管理道路
▲大きな砂防堰堤の下にもう1つの堰堤
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