◆千曲川と残雪の山岳◆
残雪の斑尾山(五月はじめ)
▲山頂部が白銀に輝く妙高連峰(五月はじめ)
飯山市や木島平村、野沢温泉村、栄村は奥信濃または岳北地方と呼ばれる豪雪地帯です。岳とは高社山(標高1352m)のことで、千曲川流域でそれよりも北の地帯を岳北と呼ぶのです。冬が厳しい分、春の風景はことのほか美しく感じられるところです。
この辺りで地理上の名勝といえば、千曲川とその河畔、そして残雪の山々です。有名な山岳は南から、高社山、斑尾山(1382m)、そして――新潟県にある――妙高連峰(妙高山2454m)が、千曲川の流れや桜、菜の花の背景としてそびえたっています。さらに雪とブナの原生林が広がる鍋倉山(1289m)と毛無山(1650m)も秀峰に加えるべきでしょう。
ところで、近年の気候温暖化にともなって、奥信濃でも植物の春の開花と残雪が消える時期は少しずつ早まってきています。
◆大型連休には大勢の観光客◆
▲大型連休になると多数の観光客がやって来る
芝草の上を歩くのも楽しい
さて、菜の花は4月半ばに咲き始めて大型連休の頃に最盛期を迎えます。
咲き始めの頃にはまだ人出は少なく、その分、菜の花公園とその周囲の風景を独り占めできます。が、やや寂しい感じはします。
右上の時計塔の写真は、4月下旬のもので、ようやく祭りの準備が進みだす頃です。先取り情報を中継するために、地元のテレヴィ局が取材に来ていました。でも人影はありません。
ところが大型連休になると、それこそ世界中から観光客が集まってきます。最近ではアジアからの訪問者数が急増しています。飯山は、いますごく人気の場所になったようです。
◆連休中の交通事情◆
ところで、連休中の菜の花公園をめぐる交通事情を説明しておきましょう。
自家用車で行く場合、会場から3キロメートルほど北の臨時駐車場(有料)に駐車し、そこからシャトルバスで移動することになります。公園周辺では駐車は禁止です。
公共交通機関を利用する場合には、JR飯山駅から菜の花公園・北竜湖行きや戸狩野沢温泉駅行きのシャトルバスが出ていて、市街地各所や観光名所に停留所が設けられています。市街地での寺めぐりと組み合わせることができます。
菜の花公園の下の河岸の船着き場からは、渡し船に乗ることができます。船に乗って、千曲川の川面から両岸の風景を楽しむことができます。
◆飯山・奥信濃の地形について◆
飯山市と奥信濃地方の地形を説明しておきましょう。下のGoogleマップを参考――表示設定を「地形」にすると立体的地形図になる――にしてください。
千曲川は、飯山の手前で、中野市の北にある高社山と斑尾山によって東西両側を扼されています。おそらく、太古には千曲川がこの2つの山系によって流れを阻まれたため、猛烈な破壊力の氾濫が岳北地域を襲って、巨大な湖を形成したこともあったと思われます。
そこで、飯山盆地全体が湿原地帯だった時期もあって、砂壌土ならびに粘土が堆積した地層が形成されたようです。その後、暴れ川、千曲川の強力な浸食作用で周囲の山腹や山麓が削られて、標高差が最大50メートル以上もある重層的な河岸段丘群が形成されました。
飯山盆地の周りの山岳は、活発な火山=造山活動でできた山脈の複合です。飯山市の西の斑尾山からは、黒倉山を経て菱ケ岳まで続く稜線が北東方向に30キロメートル以上延びています。そして、千曲川を挟んで反対側には、高社山と深い谷間を隔てて毛無山系が四方八方に尾根を延ばしています。
千曲川は、流域両岸の長い尾根筋のあいだを大きく北向きから東向きへと大きく湾曲しながら、あちこちで多数の尾根にぶつかって小さく蛇行して新潟に流れ下っていきます。こうして東西の山脈の谷間に、東西差し渡しが最大5キロメートルで、南北奥行きが10キロメートルほどの紡錘形の盆地が形成されました。
ところが、この谷間は上境という場所で閉じられ、千曲川は越後との国境では山地の隙間を縫うように蛇行するようになります。
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