室町末期の元隆寺絵図には、小菅の里の北端に北竜池、南端に南竜池、そして中央部に蓮池という3つの大きな池が描かれています。北竜池は、今日では北竜湖と呼ばれています。ほかの2つの池は今はなくなっています。
◆静謐な北竜湖◆
小菅集落と北竜湖は尾根で隔てられているので、北竜湖まで行くためには、尾根を越えることになります。
北竜湖はちょっとしたリゾート観光地で、湖畔には温泉施設もあります。桜並木や菜の花畑があって春には――雪解け水を集めて湖の水位も高く――美しい花の名所となります。夏にはボート遊びやキャンプも楽しめます。
▲北竜湖の東岸の様子
▲林道から湖の西岸を眺める
◆集落内の蓮池跡◆
さて、蓮池は、かつて元隆寺中の院の東側、菩提院と観音堂の下(西側)にある南北に長い平坦な場所にあったようです。北竜湖との間に割り込んでいる尾根の麓から菩提院の真下まで水面が続いていたものでしょう。今は草地や畑地となっています。
蓮池があった場所の東側には、2段の段丘崖が今でも残るっていて、それぞれ2メートル近い段差は石垣で補強されています。
▲集落を横断する断層崖
◆村はずれの南竜池◆
小菅集落の南端、尾根の下にあったのが南竜池です。上流から流れ込んだ土砂が堆積してどんどん浅く小さくなった南竜池は、それでも昭和期までは沼地ないし湿原として残っていました。
ところが現在、尾根の麓は一面の草原となっています。とはいえ、地面は湿っていて、ところどころに湿地が残っていて、歩くことは容易ではなさそうです。
この草原は、半月形ないしそら豆のような形をしています。現状から、室町から江戸時代までの池の形(地形)を想像すると、最大で南北に差し渡し400メートル、東西に200メートルほどはあったのではないでしょうか。
してみれば、往時の元隆寺と集落は、仏塔や伽藍・堂宇が水辺に囲まれた風光明媚なところだったのでしょう。今でも、小菅集落には流れ下るせせらぎの水音が絶えません。
▲道の左側がかつての池
▲今では乾燥が進んだ湿地跡
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