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長野県小県郡
長和町和田
 
 
城砦跡の神社


▲追川対岸の久保集落からの石尊神社と城址の眺め。古峰山の北東端の崖上にある。尾根の下は釈迦堂橋。

  郷土史家によると、古峰山の長い尾根上には数百メートルにわたって和田氏の砦遺構群が並んでいるといいます。それというのも、野々入川の谷間から古峰山に上る経路はいくつかあるため、敵の侵攻を防ぐため、和田氏は古峰山の尾根筋に数キロメートルにわたって断続する防御土塁や空堀を築くことになったからだそうです。
  現在、和田城址遺構として整備されているのは、その北端の一部分だけのようです。尾根伝いに歩くと、それらしいいかにも人工的な起伏が見られるそうです。
  今日、石尊神社と城址となっているのは、城砦の北東端の2~3の曲輪です。

■石尊神社と和田城址■

◆険しい杣道を歩く◆

  熊野神社から石尊神社まではおよそ600メートルほどの急斜面を上下する狭い険路を歩かなければなりません。ここを歩くなら、やはり登山靴が安全です。
  杉林を抜けるとカラマツ林、その先にはコナラなどの落葉樹林が山を覆っています。


▲初夏の木漏れ日を浴びながら

▲足元の安全に注意しましょう!

◆城砦曲輪跡の石尊神社◆

  尾根の先端を縁取る崖というべきほどの急斜面の上に石尊神社があります。ここは、地元の人から「古峰さん」という愛称で親しまれているとか。古峰山神社と仮称されることもあるようです。
  ところで、石尊とは、一般には、江戸中期から庶民の間に信仰が広がった相州大山の石尊権現を意味するようです。しかし、この神社の縁起は不明です。釈尊権現の祭祀に多く見られる石碑もありません。
  これについて、私の勝手な根拠のない当て推量を言うと、社名は「せきそん」ではなく「しゃくそん」――つまり釈尊を暗示する――ではないでしょうか。大井氏が支配していた頃、この一番下の曲輪に仏教の庵があったのではないかとみているのです。
  というのも、この尾根端の下は「釈迦堂」と呼ばれている場所だからです。その昔、その場所には釈迦堂があったのでしょう。そして尾根の端に釈迦堂の別坊のような庵があって、江戸中期、ここの人びとは大井氏を追悼するため、石尊権現信仰に仮託して「しゃくそん」とも読める庵を城跡に設けたのではないでしょうか。
  そして、ことに明治時代には廃仏思想が流布したことから、庵の伝統を守るため寺院施設から神社へ衣替えした……と私の空想は広がっていきます。


▲奥祭壇には天狗の面が祀られている

  さて、石尊神社は和田城砦の一番外殻の曲輪で、この稜線のさらに奥に土塁やら空堀やら砦の基盤のような遺構が点々と残されています。
  社殿の脇には上の曲輪に昇る木道階段が設置されています。和田城址遺構にいたるコースがあるのです。
  神社がある壇の上にはさらに二段の曲輪壇が続いていて、その間の斜面は人工的にならされています。城址まで行ってみましょう。

◆城砦の跡◆

  石尊神社脇の木道階段を昇ると、20~30畳ほどの広さの砦跡に出ます。城砦のために尾根を削って造成された平坦な場所です。
  「和田城址」という標識版が立っています。
  この曲輪の北西端には木製の祠(小さな社殿)がありますが、祭神は不明です。砦の守護神として古くからあったのかもしれません。

  ここは城砦の端で、城砦の防御施設はここから尾根の奥まで少なくとも3キロメートルは断続します。というのは、この尾根に野々入川の谷間から容易に登れる地形となっているからです。尾根上の城砦に攻め上る敵を防ぐためには、稜線上に断続する防備が必要だったのです。
  鎌倉期・室町期から美ケ原や霧ケ峰、和田峠という高原の手前に位置し、肥沃な和田郷は、対抗し合う武将領主たちにとって、争奪戦を挑むに値する魅力的な場所だったのです。

  というように、ここは「つわものどもが夢のあと」なのですが、険しい尾根上の城跡は美しい山林に取り巻かれています。ことに晩秋のカラマツ林は秀逸で、金色に輝く針状の葉が小さく羽ばたきながら舞い落ちていきます【写真下】。


▲曲輪の南東側には美しい晩秋のカラマツ林


急峻な山腹を横切る小径

植林でつくられたカラマツ林

手すりガードが付いた桟状の階段木道で
歩きやすくなっているところもある

急な坂を上り下りする

崖の縁の最下段の曲輪にある石尊神社

この社は蓋殿というよりも神楽殿というべきか。

社殿内の奥には祭壇があるようだ

小径の先に熊野神社が見えてきた

崖縁にある社殿を上の曲輪壇から見おろす

さらに上の曲輪壇に昇る木道階段がある

尾根の頂部を削って造成された砦跡

曲輪の北西端には木製の祠がある

昇り口を振り返ると……

曲輪の南西端は空堀と土塁で防護されている

尾根奥に向かって空堀や土塁の遺構が断続する
 
 
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