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長野県上伊那郡辰野町〜塩尻市
 
 
南小野上町


▲駒沢川に架かる橋から南面して小野上町を眺める

  南小野上町には、江戸時代の「安政の大火(1859年)」後に再建されたと見られる宿場独特の町屋古民家が十数件ほど集まっています。江戸末期の南小野宿の様子を偲ぶことができる街並みです。


▲上町問屋の軒下から斜向かいの「あぶらや」と「たちばなや」を眺める

  小野上町から下町までの街筋の町屋は、現在の国道が建設されたときに道沿いの家屋を後退させなかったようです。家屋と街道とのあいだに前庭が設けられていたので、両側ともにそれぞれ、その前庭分の2間を道路用地に提供したのです。
  ということは、往時には、街道の両側にそれぞれ幅3.6メートルほどの前庭(樹木・植栽)があったわけで、素晴らしく美しい街並み風景が見られたはずです。江戸時代の宿場住民と旅人は、車両という「便利な交通手段」を使うことはなかった代わりに、すこぶる美しい景観を楽しむことができたわけです。
  近代化と工業化は、そういう代償を払ってなしとげられたのです。

■小野上町の街並み■

◆宿場の繁栄を物語る町屋群◆


▲駒沢川沿いの「野口屋」と「かしわや」

  上町には小野宿が建設され始めた頃の町割り――間口が狭く奥行きが深い短冊状の敷地割り――がそのまま残されています。したがって、間口が広い町屋の敷地の奥行きは、かなり深くなっています。主屋の奥には、中庭はもとより、土蔵や離れ屋などがいくつも並んでいるのです。
  ここには、本棟造りの町屋古民家が十数軒、往時の基本構造を保ったまま残されています。

  上町の家並みを北から見ていきます。まず国道の東側は、「野口屋(本家)」で、これは棟入り(平入り)の造り。
  国道の向かい側は、駒沢川河畔から「かしわや」「よろずや」「千歳や」と棟入りの町屋が3軒並んでいます。⇒参考資料:上町の町屋の配置図


▲ここに「さわや」があったのか?

▲「南塩終点の地」の石碑。三州街道で運ばれた太平洋岸の塩は、小野宿が終点となった。隣の宿駅、塩尻は北(日本海)の塩の南限だった。

  王子「たちばなや」があった敷地は、今では小野光賢光景記念館となっています。主屋の手前に土塀と薬医門が構えられています。その南隣が「酒屋」で、さらに隣が「油屋」。この2軒の主屋は、妻入りの本棟造りの結構です。
  これらの向かい側(東側)には、「南塩終点の地」の石碑の隣に「問屋小野家」の重厚な妻入り町屋、さらに南隣に旧郵便局と思しき洋風寄棟の建物が並んでいます。
  妻入りの造りは、本棟造りの特徴をよく表しています。大きな屋根は平屋風に見えますが、屋根裏風の二階があって、妻面に出格子窓が設えられています。この様式では、二階(屋根裏二階)の上に屋根を載せるために、家の高さがかなり高くなることになります。

◆武家屋敷と旧中山道宿駅の問屋◆


▲初期中山道問屋跡の石標

  小野宿の高札場の南には重厚な構えの武家屋敷の門があります。「武家屋敷倉澤家」という表札が門扉に掲げられています。
  その漆喰土塀の前には「初期中山道小野宿問屋跡」という石の標識が立てられています。すでに記したように、小野宿は当初、木曾から牛首峠を越えて下諏訪にいたる中山道の宿駅として建設されました。
  その当時の問屋邸がここにあったのです。ここは、高札場よりも南で、往時の地籍は雨沢で伊那高遠藩に属していたはずです。ということは、当初の江戸幕府の意向では、中山道の宿場は南小野につくるという方針だったということでしょうか。
  ところが、三州街道の宿場としては小野神社の門前町である北小野の方が栄えていたうえに、街道整備を担わせた松本藩に配慮して、下諏訪に向かう本街道は北小野から始まるようにしたということでしょうか。


国道の東側の家並み:手前は「野口屋」

西側の家並み:一番手前は「かしわや」

「よろずや」と「千歳や」

「たちばなや」は今、小野光賢光景記念館か?
外装を洋風に改めた古民家

小野記念館の南隣は「酒屋」

酒屋の隣は「油屋」。
家屋の正面の形は五角形で、妻入りの様式。
問屋小野家の町屋のみごとな結構

問屋小野家の南隣は旧郵便局の建物

高札場

商家群の南側にある武家屋敷

樹高な門扉に掲げられた表札:倉澤家とある

上町街並みの南端の様子
 
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  • 東海道や日光街道、甲州街道、北国街道との連絡を図解。

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