◆とにかく「懐旧」の貌を探す◆
古い店舗家屋が新しい建物に置き換えられていること自体は、商店街が現在も生き続けていることを表すものなので、あながち悪いことではないでしょう。
商店が現在の経営環境に適応して生き残っているわけですから。
とはいえ、その街が長い間保ってきた趣とか歴史の厚みを残しながら、その街らしさや個性を表現してほしいものだとも思うのです。
というわけで、私のタウンウォッチングはひたすら「懐かしい」感じを伝えてくる建物を追い求めることになります。
与良町通りに入って最初に「いいな」と思ったのは、灰色にくすんだ店舗家屋。「八千代竈本舗」の表示があります。「かまど」づくりを生業にしていたのでしょうか。
▲山野や田園に近接した街の風景
◆農村との絆を残す与良の街並み◆
1591年に豊臣家は、小田原攻めの軍功によって仙石秀久を小諸城と5万石の領地を与えました。仙石家は小諸城の拡充を進めるとともに、17世紀はじめに近隣の農村から住民移住を促して北国街道小諸宿の都市集落の建設を指導しました。
小諸の街の南端には、与良平村と古与良村の住民を移住させて与良集落を形成させました。
▲右手には小山家(旧庄屋)の屋敷
与良は本町と同じくらいに歴史は古い街なのですが、当時から、農村色が強い都邑の南端にあったせいか、田園も近く周囲の農村との深い絆が保たれてきたことを感じさせます。
想像してみるに、本町や荒町のように似たような造りの規格化された商家が並ぶというよりも、財力や商い業種・業態に応じて多様な店舗家屋が建ち並んでいたのではないでしょうか。
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