■真夏でも涼しい湖畔の小径■
▲湖面に浮かぶボート上でワカサギ釣り
湖畔の散策路は地元住民にも観光客にも人気の場所で、朝から夕方まで散歩や釣りなどを楽しむ人たちでにぎわっています。とくに夏の午前中は東岸山腹の森の木陰になるので、涼しくて快適です。
湖畔散策路に立つ釣り人の狙いはブラックバスです。これに対して、湖面にボートを浮かべて釣り糸を垂れる人たちは、獲物としてワカサギを求めています。
湖水の生態系を回復させるため、ブラックバスは釣り上げた後のリリースは禁止されています。そこで、湖のなかに生き残っているブラックバスはかなりの大物だけで、賢くなっています。よほどに巧妙な戦術をとらないと、湖畔の釣でブラックバスを釣り上げることはできなくなっています。
時刻は10時近く。経験豊富な釣り人の話では、この時間だとブラックバスは湖岸を離れて深いところを回遊するか、湖面中ほどのボートや浮桟橋の下に身を潜めているだろうとのことです。早朝でないと、湖畔からブラックバスを狙うのはかなりむずかしそうです。
この湖畔の散策路は自動車道のすぐ脇(西側)にあって、自動車道から散策路に降りる歩行者用の連絡路がところどころに設けられています。自動車道と散策路との高低差は2~3メートルほどで、そのあいだの斜面にはカラマツやアカマツ、栗や山桜、コナラなどが並び、それらの根元にはアジサイが植えられています。
地元の人たちは樹木や草花の植栽など、遊歩道としての景観の美化にも取り組んできたようです。
散策路の路面と湖面との落差は、湖の水位によって変わりますが、この日は30~60センチメートルほど。風が強い日だと波しぶきが路面に届くことがあるかもしれません。
■湖畔の風景を楽しむ■
木崎湖は、南に細く尖った獅子唐辛子のような形をしています。湖の北部の東西に膨らんだところでは、湖面の幅は1.2キロメートル近くあります。これに対して、南部の細長く尖った形のところでは湖面の幅はせぜい400~300メートルくらいでしょう。その辺りでは森城跡の湖畔低地が西から張り出していて、そこで急に湖の幅が狭まるのです。
木崎湖の南端部600メートルほどは、狭い入り江のようになっているのです。
稲尾の水田地帯の南端から湖畔散策路を300メートルも歩くと、信濃公堂がある尾根の先端を回り込むことになりますが、その辺りで湖の幅が一気に狭まるのです。その辺りから対岸(西)を眺めると、森城跡がある低地が湖面に張り出しているのが見えます。
この辺りの湖岸道路沿いには、並木のようにカラマツやアカマツが一列に立ち並んでいます。そして対岸には、森城跡に背の高い針葉樹林――杉やサワラ、アカマツ――が広がっています。城跡から南には森の民宿・旅館街が続きます。
散策路から見ると、そんな南西岸の風景を背景にして、湖面には多くの小舟の姿が浮かんでいます。湖面の幅が狭く、入り江のように岸辺が近く波も静かなので、安心できるせいか、湖の中央部よりもずっと多くのボートが浮かんでいます。乗り手は、ワカサギ釣りや水遊びの人びとです。ライフジャケットを装着していても、水深も深く湖岸から遠い中央部に行くにはかなりの勇気と操船技能が要るようです。
▲散策路の南端は、山崎の旅館街(小径の左手)
湖南端辺りの水面には睡蓮が繁茂しています。散策路の東傍らには山崎の旅館街が続いています。それぞれの旅館は裏手の湖水側に小さな桟橋を設けていて、そこから自前の小舟を使って泊り客を舟遊びに案内するようです。
さて、湖の南端からは農具川が2筋、南に向かって流れ出ています。そこで、散策路はおしまいです。
川の出口とも湖水域ともつかない水辺の岸に草地があって、木製ベンチを屋根が覆うだけの「あずまや」があります。そこにいた外国人と取材を兼ねてしばらく話をすることになりました。オーストラリア(シドニー市)出身のマークさんで、現在は白馬村の八方尾根の麓に暮らしているそうです。一度仕事を引退して、今ではテンポラリーのフォトグラファーをしているそうです。四季の移ろいがはっきりしていて、長い歴史と文化がある信州の田舎が気に入って、白馬村に住んでいるのだとか。
▲美しい花を咲かせた睡蓮
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