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長野県北安曇郡白馬村
姫川河畔歩きで森林浴

  白馬村では都市計画として、2002年度から2006年度までの5年間で大出吊り橋から姫川の両河畔(峰方沢合流部を含む)を公園化しました。従来から、大出吊橋と姫川の青龍、背景の白馬連峰の風景は、白馬村を代表する風景となっています。


▲姫川と峰方沢との合流地から大出吊り橋を眺める: 背景は白馬乗鞍岳の稜線


▲大出公園の親水地から眺めた河岸段丘上の大出集落: 水車小屋の背後に高低差3メートル以上の段丘崖が横たわる

  そこでこの自然環境を保護・活用するため、公園計画は、①農村の原風景を保全し、良好な景観を活用した魅力ある公園をつくる、②河川沼沢のまわりの植生を活用し、豊かな自然とのふれあいの場として整備する、③歴史的空間・景観の保全と活用を通じて、来訪者と地域住民や地域文化との交流をできる場をつくる、④地域の活性化に役立つ環境整備を進める、という基本方針で進められたのだとか。
  今では、多くの観光客が訪れる人気の場所となっています。今回は、この公園の遊歩道をめぐり計画です。


親水地の水車小屋:小川から南側(左側)は湿地帯となっている▲

  かっぱ亭から村道を東に120メートルほど歩いた道脇に駐車場があります。道を渡ると、河川敷に降りていく小径があります。小径は親水地と呼ばれる野原に続いていて、そこに小川の水で回る水車の小屋があります。
  そこから南側は湿地帯となっていて、その南側をほぼ直角に回り込むように川縁の遊歩道が設けてあります。この遊歩道は吊り橋の北端まで続いています。

  ここは、東向きに流れてきた姫川が湾曲しながらほぼ直角に北北東に向かって曲がる場所で、その出っ張った河川敷が湿地となっているのです。手始めにまずこの小径を散る橋まで歩いてみましょう。


▲吊り橋北端から河畔小径に降りる階段

▲吊り橋脇の階段を対岸から眺めると・・・

◆段丘崖の遊歩道◆

  上の写真を見てください。吊り橋の北端には川縁の崖にへばりつくように狭い遊歩道に降りる階段があります。この崖は、3段になっている姫川の一番下の河岸段丘の崖です。
  これほどに切り立った崖の渓谷ができたのは、姫川の水流の激しさもありますが、なによりも川が断層帯に沿って流れているからです。姫川の水流はこの一帯をのたうちながら浸食作用を繰り返したあげく、断層の亀裂に落ち込んでいったのです。

  姫川は、ここまでスキーのウェーデルンのように蛇行しながら渓谷を刻み込んできたのですが、ここで北東から南西に延びる高戸山系の尾根に衝突します。この山系が隆起するさいにできた直線的な断層帯の淵に落ち込んだ川は、尾根の裾を削り取りながらも、松川との合流部まで尾根の下を直線的に流れ下るようになったようです。
  姫川が尾根裾に沿った谷を形成したのは、高戸山と東山とのあいだを流れ下る峰方沢が南からぶつかるように姫川に合流したため、尾根に直角にぶち当たる水の力のヴェクトルを逸らしたせいかもしれません。


▲小径脇のハンノキの向こうは湿原

▲崖縁の小径から吊り橋を眺める

◆姫川南岸(右岸)の散策◆

  断層崖にへばりついた散策路を歩いて吊り橋まで着いたら、橋を渡って茶屋の東側の低地に降りて、姫川南側河畔を散策しましょう。

  樹林の下には庚申塔が置かれています。白馬村ではどこに行っても庚申塔や石仏・石塔に出会います。
  庚申塔の東側には広い草地が広がっています。草原は峰方沢との合流地まで続いています。子どもたちを集めてさまざまな行事が催されることがあるのかもしれません。
  広場の橋、姫川の縁には桜並木があって、心地よい木陰をつくっています。並木沿いに歩いて、川面を眺めるのも楽しそうです。


▲広場の縁の桜並木: 木漏れ日が心地よい

▲まったりと川面を眺める

▲峰方沢の合流点から西の眺め

  広場の東端を峰方沢が流れ、2メートル以上も落ち込んだ谷をつくっています。そこに架かる橋を渡ると、そのさきにも草原が広がっています。
  この草地は、尾根裾と姫川とのあいだにあるもので、尾根の麓まで山林が迫り、木陰に沢が流れていて湿地になっています。ミズバショウなど湿地に生える野草が見られます。


峰方沢を渡った先に広がる草地

尾根裾の木陰には湿地があって、ミズバショウも生えている

▲左手には深い山林が迫っている

  ここから尾根の山森を往く遊歩道が始まります。そのほぼ起点に河岸展望台(段丘テラス)があって、ここで観光ポスターなどで使われる、大出からの白馬連峰の眺望の写真が撮影されます。この公園で最高の絶景ポイントなっているようです。
  遊歩道は起伏に富んでいて、山中の樹林を歩くような感じで、森林浴に最適です。遊歩道は、この先800メートルくらい続いていて、押込吊り橋まで連絡しています。その橋を渡って、川沿いに引き返すと大出集落に戻ることができます。ところが残念ながら、2020年9月現在、展望テラスの少し先からは立入禁止となっています。
  2019年5月末に取材に訪れたときには、遊歩道は少なくとももう少し先まで進めました。とすると、考えられる理由は、その年の秋の豪雨災害です。というのも、この公園がある尾根は、フォッサマグナに属する活断層帯で崖として切り立っています。地震も何度もありました。緩んだ断層帯の脆い尾根斜面や谷が増水で崩落した可能性は充分あります――ただでさえ峻険な小径なのですから。
  でも、展望テラスは遊歩道の入り口にあって、そこまでは安全に景観を楽しめます。道脇のカフェは、表示では休日や土日に営業しているようです。


▲樹林を左手が展望テラスで右手がカフェ

▲展望テラスから眺めた大出集落

  しかし、押込吊り橋を撮影しようと計画してきたので、姫川左岸を往き、大出集落の東端にある浄水場脇の遊歩道からアプローチすることにしました。
  大出集落内を300メートルほど歩き、姫川河畔の道を浄水場脇から500メートル歩くと押込吊り橋に行き着くのです。
  この道では、激流の姫川が裾を洗っている険しい尾根や道沿いの山桜の並木を眺めることができます。尾根、高戸山系が大地を切り割るように隆起したさいに生じた断層に沿って尾根の西側が崩れ落ちて崖を形成した様子が想像できる場所です。
  押込吊り橋に着いたら、橋を渡りながら姫川の激しい流れや、東岸の尾根が川側に切れ落ちた崖になっていること、そして場所によっては崖面の岩や土が崩落している様子を眺めてみましょう。そして、広葉樹が覆った急斜面は土盤がどうにか保たれている様子を。


▲樹林を左手が展望テラスで右手がカフェ

▲姫川に向かって切れ落ちている尾根断層崖


主落がある段丘から河川敷に降りていく小径


湿地帯にはアヤメ類やミズバショウなどが生えている


道脇には花桃や山桜などの並木がまばらに植えられている


左手が姫川で右手が湿原となっている


湿原越しに樹間から茅葺古民家が見える


対岸に見えるのは吊り橋茶屋の茅葺小屋


姫川と峯方沢との合流地


合流地の下流: 雨の後で水嵩が増し、波も荒い


対岸には桜並木で縁取られた草原が広がる


吊り橋とその背後には、河畔の樹林越しに白馬連峰

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吊り橋茶屋の東脇、姫川南岸の散策路の入り口


吊り橋から峰方沢までのあいだに広がる草原


姫川南岸からの吊り橋の眺望


峰方沢が合流する直前の石垣堰堤滝


姫川川縁には桜並木:草原を縁取り日陰をつくっている


公園展望台の下からの眺望


山林を往く遊歩道: 左手には崖、その下に姫川が流れる


通行止め表示と閉鎖ロープ


尾根裾の谷底には姫川の激しい流れ


姫川の谷に架かる押込吊り橋


河岸の崖には岩石蛇篭を敷いて浸食を防いでいる


大出公園展望台からの雄大な眺め

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