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長野県北安曇郡白馬村
  千国街道(塩の道)をめぐる旅は、小谷村栂池高原から南に進んで白馬村に入ります。
  白馬岳の山麓のリゾート地として有名な白馬村ですが、私は塩の道沿いに歩を進めて、日本の伝統的な面影の美しさ、懐かしさを追い求めていきます。
  今回は、白馬村北城落倉から切久保までを特集します。

  写真は、白馬村北条の山林のなか【撮影は8月】
落倉から切久保まで

  千国街道の往時の道筋とか痕跡は、小谷村松沢峡谷の真ん中で消えてしまいました。とりあえず県道433号に沿って白馬村に入り南に進むことにしました。
  松沢の谷を南にのぼりつめると落倉です。往時ここから切久保集落まで往く小径があったはずですが、痕跡は見つかりません。明治20年代に千国街道に沿って道路(千国北城線)が開削され、それが現在の県道433号に整備されたそうですから、落倉の山林のなかを切久保まで行ってみましょう。


▲白馬村 落倉自然園の入り口脇にある庚申塔と石仏群


▲落倉近くの山林(別荘地)のなかの道

  栂池パノラマ橋の南端から300メートルほど南に落倉自然園の入り口があります。その脇に庚申塔と石仏群が並ぶあります。ここが古い街道脇の庚申塚だったのかもしれませんし、あるいは明治期以来の道路整備のさいに庚申塔や石仏をここに集めたのかもしれません。
  いずれにせよ、千国北城線に沿って塩の道があったに違いありません。切久保まで行って往時の歩も影を探ることにしましょう。


▲樹間に見える尾根は白馬乗鞍岳のものと思われる

■諏訪神社と切久保集落■

◆切久保の開拓の歴史を想像する◆

  白馬村は昭和期に北城村と平川村の合併でできた自治体です。この地方は、古い時代(平安末期~江戸時代)には千国庄に属する新興開拓地で、広大な原生林や湿地帯が塩の道に沿って切り開かれ、村落や農耕地がつくられていったそうです。


▲塩の道脇の切久保諏訪神社

  姫川に西側から楠川と松川が流れ込み、東から青鬼沢と菅沢が合流するこの地区は、古代には氾濫などで広い湿地や沼地となったと思われます。そんなとき塩島城跡がある山(城山)は水面に浮かぶ島のようになったでしょう。糸魚川からの塩を運ぶ経路上にあるその山は、塩を安全に保管する場所として、塩島と呼ばれたのではないでしょうか。
  もちろん、これは私の勝手な想像にすぎませんが。
  江戸時代には、この切久保をはじめ、その東方の立ノ間、青鬼や森上近辺の地区は全体として塩島村を形成していました。切久保は古くは霧窪と書かれていたのかもしれません。というのは、この辺りは霧降の里という呼び名もあるからです。
  岩岳の東麓にある切久保は、南に松川、東に楠川が流れる複合扇状地の上の段丘にあって山間の広い窪地をなしていました。冬季や雨期にはこの窪地に深い霧がまいていたいたのではないでしょうか。
  安曇族の信州内陸への進出ということを考えると、塩の道古道は平安時代前期には原型がつくられていたようです。とすれば、遅くともその頃には千国庄の開発・開拓が本格的に進んでいて、古道沿いに塩島郷にも開拓民がやって来て集落や農耕地を衝きり始めていたでしょう。


▲鳥居の先の境内の様子

▲境内の一隅に並ぶ小さな石祠

▲石垣壇上の様子

▲境内を流れる沢

▲拝殿を見あげると・・・

◆切久保諏訪神社◆

  そうすると、平安時代の中頃までには霧窪に――安曇族とも関係の深い――諏訪神社が勧請創建され、開拓村の鎮守として開拓民たちの尊崇を集めていたのでしょう。
  神社の境内を神水ともいうべき沢が南北に流れています。鳥居は南向きで、沢の畔に神楽殿があって、境内の北、山裾の石垣壇上に拝殿と本殿があります。拝殿の横には双子のような大杉が立ち、その脇に竃神社、さらに祖霊社が並んでいます。

  さて、落倉から切久保までの塩の道の痕跡は見つかりませんが、県道433号(千国北城線)を南進すると、道の両側にグラウンドが見えてきたら、西に向かう分岐路に入ります。分岐から500メートルほど進むと、左手に神社が見えてきます。それが切久保諏訪神社です。
  そこは白馬岩岳スキー場の東の麓で、旅館やホテル、民宿などが集まった小さな集落です。


▲集落の中ほどにある茅葺古民家

▲無住で荒れ始めている


切久保から落倉方面に向かい塩の道

切久保集落にさしかかった:左手は諏訪神社

ここから岩岳スキー場の集落が広がる

明神社様式の鳥居

切久保諏訪神社の拝殿は石段をのぼった壇上に

沢の縁にある神楽殿

拝殿脇の双子の大杉。根元は合体している。

拝殿奥の本殿蓋殿

壇上で拝殿の横に並ぶ竃神社

切久保の水田地帯。背後の山に青鬼集落がある。

街道跡と思しき場所からの切久保集落景観

神社から東に集落内の道路を歩く

旅館やペンションが並ぶ・背景は神社の守

夏の日z氏を浴びる集落

三叉路辻にある石仏群(道祖神や庚申塔)

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