白馬村のなかを姫川はだいたい北北東に向かって流れていますが、2度ほど大きく東に蛇行するところがあります。ひとつは大出で、もうひとつが大出の南にある蕨平です。南から北に張り出している尾根裾とぶつかるからです。
蕨平は、大きな尾根の中腹が西に向かって窪んでできた谷間にある集落で、蕨平橋で姫川を南に渡ってから急坂をのぼったところにあります。蕨平という村落の名前は、いたって風雅な響きをもっています。
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▲かつてスキー場だった斜面に咲く秋の花
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▲集落の入り口の休憩所: 村の案内地図がある
尾根の麓には姫川に沿って河岸段丘が広がり、広大な稲作地帯となっています。そろそろ収穫期に近づいて黄色味を増した稲田を見おろしながら集落に近づくと、分岐点に差しかかります。右手の道は北野天満宮を経て集落南部にのぼる小径。左の道は集落の中心部に往く道です。
天満宮の南側には、山林を切り開いた草原斜面が広がっています。これは、かつてのスキー場の跡で、25年以上前までは多くのスキーヤーで賑わっていたそうです。それ以前は、ここは茅場で、茅葺屋根を葺くための材料を育て刈り取り、乾燥させていたのだとか。白馬村や小谷村では、かつての茅場は山腹斜面の起伏をならしてあるので、その多くがスキー場のゲレンデとなったそうです。
ということは、リゾート開発が盛んになる頃に萱場は次々と消えていって、茅葺屋根には金属板が被せられるか、改築されていくようになったことを意味します。
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▲古民家の背後に尾根の背が迫っている
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▲端正に修築されている古民家
◆古民家群と山小屋風の住宅群◆
蕨平には、茅葺古民家(金属板を被せてある)が5軒ほど残されています。そのほかの民家は、シックな山小屋風というか民宿風の造りになっているものが多いようです。古民家の多くは、かなり丹念に補修されて美しい相貌となっています。
こういう村落の姿になったのは、この村の南側にかつてスキー場があって、都会からの観光客の好みに合わせて古民家を残して民宿にするか、落ち着いた趣の山小屋風の民宿にするかしたのでしょう。
全体として、かなり感じのいい山村風景が保たれたることになったようです。
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▲急勾配の古民家の屋根が連なる風景
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▲集落の縁辺の尾根頂上は畑と樹林帯となっている
さて、蕨平が位置する尾根は東側が急峻で西側にもっとなだらかな形を成しています。したがって、西側斜面に集落がつくられ、尾根の背には畑を開きその北と東側に防風のために植林を施したのです。
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