▲谷からのぼる農道遊歩道
JR大糸線南小谷駅から400メートルほど北、国道148号沿いに小谷村郷土館があります。小谷村役場の南隣です。千国街道は、郷土館の前を南西に向かい、姫川左岸の急な斜面をのぼっていきます。この急坂は三夜坂と呼ばれています。
このあたりは姫川の峡谷が南西から北東の方向に続いています。川面は標高500メートル余りで、街道はつづら折りに屈曲しながら、そこからおよそ高低差にして80メートル近くを西ないし南西にのぼっていきます。
街道は標高600メートルほどに達すると、等高線に沿うように上り下りの起伏は小さくなって、ときには尾根や谷間を回り込みながら千国の集落に向かっていきます。
▲山道脇に立つ石仏
▲谷の対岸の山を横目に街道を進む
標高600メートルの高さを保ちながら街道が往くのは、水量が多姫川の急流に近づく危険を避けるためでしょうが、その標高の辺りでは山腹斜面が緩やかになっていからです。南北に連なる小さな尾根の背を往くところもあります。
さて、街道は突出した尾根を北に回り込んで、坪山地区に出ますが、そのあとはほぼ南に向かいます。土倉、そして大別当という地区を経ると、姫川に注ぎ込む黒川沢の狭い谷間を回り込みながら渡ると、いよいよ千国地区に出ます。
千国の集落は、姫川に流れ落ちる親沢の谷間にあります。親沢は水量が多い急流で、沢の周りに河岸段丘と狭い扇状地を生み出しました。その段丘と扇状地に古くから集落が建設され、棚田が開拓されてきました。
千国の親沢の河岸段丘と扇状地はそれ自体、姫川が生み出した巨大な河岸段丘台の上に乗っかっているように見えます。姫川の流れが蛇行しながら刻み込んだ巨大な渓谷と川沿いの河岸段丘。そこに左右両側の尾根のあいだを縫うように沢や渓流が流れ落ちて姫川に合流します。
そういう沢や渓流はそれ自体で、大構造としての姫川渓谷を横断するように、小規模な谷間と河岸段丘、扇状地をつくり出しています。千国では、姫川の対岸にも同じような段丘台と扇状地があって、姫川を挟んで鍋底のような地形となっています。これが千国の谷間です。いやはや、じつにダイナミックな風景です。
こういう地形なので、古くから人びとが集落を形成し、田畑を開墾してきたのでしょう。
千国の谷間に出ると、なんだか開放感を抱きます。往時の旅人もそうだったでしょう。千国集落の手前で、私は小谷小学校の元気な児童たちと出会いました。街道沿いを散策して、野外観察をおこなっていたようで、捕獲した一つがいのイモリを小さなバケツに入れていました。
子どもたちが自然に触れて育つには、ここは抜群の環境なのだと感心しました。
▲小谷小学校の児童たちと出会った
▲諏訪神社の境内を抜けて往く
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