◆正面参道に回ってみよう◆
▲総門は端正な薬医門方式
霊松寺の駐車場は2つあります。ひとつは林道から入って鐘楼の前にある駐車場。こちらは健常者ないし「歩きたい派」向けです。もうひとつは、その駐車場を経由して本堂と庫裏の裏を回り込んで入る駐車場。こちらは、高齢者や歩行困難者向けです。
正式の参詣をとこだわる方は、千国街道沿いの御嶽山国立神社の脇から登る遊歩道を歩いてください。落ち葉が降り積もった、足にやさしい小径です。地元の「通の人たち」はこの小径を散策しながら参詣するそうです。
▲ドウダンツツジ越しの山門
▲本堂と庫裏が直角をなして隣り合う
▲山門と庫裏にあいだから本堂を眺める
◆風格のある建物群◆
さて、総門は薬医門方式の造りで江戸末期の建築。近年再建したそうです。もともとは杮葺きだったようですが、今は銅葺き。このところ、銅板が酸化して枯れた味が好印象。
次に山門は十二脚の楼門方式です。江戸末期の建築で、1874年の明治政府による廃仏太政官令によって松川村の観勝院が廃寺・破却されたさいに解体してこの地に移設したそうです。これだけの文化財が失われなくて、本当に幸いでした。
1993年には県宝に指定され、2004年に屋根が金属版葺から茅葺に復元されました。
山門の真後ろには本堂。
本堂は、明治政府の葉仏令の直後に建立されたのだとか。広壮で立派な造りですから、多額の費用が信者檀家から集められたでしょう。廃仏毀釈という世の動きに抗っても、多くの人びとが求めたということです。
本堂と直角をなして隣に並んでいるのが庫裏。禅堂にもなるのか、圧倒的な存在感。1847年、善光寺地震による火災で堂宇がすべて灰燼に帰した直後、再建への第一歩としてこの庫裏が拘留されました。
▲周囲の山林と庭園が隔てなく融合
山寺のいいところは、周囲の山林と境内庭園とがことさらに隔たりなく連続して一体化している点です。これが日本人の自然観と世界観、つまりは宗教観を表すもので、自然と人間社会を連続的・一体的に観照する発想です。
そうであるとしても、人の手を加えた自然=樹木は一風独特の存在感を放っています。ここでは、一体的でありながら、自然物に人間の心を映させて相互に媒介的な実在が示されます。
▲この輝きは雪と氷の到来の予兆
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