旧中山道の歴史的景観には、街並みもさることながら、街道沿いに眺めることができた周囲の風景も含まれています。往時の旅人はどんな風景を見ながら街道を行きかったのでしょうか。
和田峠を越えて下ノ諏訪の街はずれにさしかかった旅人が目にしたであろう風景を探してみましょう。
▲慈雲寺の堂宇と樹林の向こうに諏訪湖が見える
旧中山道のうちかなりの部分が現在の国道142号と重なっています。砥川の谷間に沿って南に下ってきた旧街道は、慈雲寺の手前の辻で国道から右に逸れます。
その道の右側には、杉の巨木を中心にした深い樹林が迫っています。これは諏訪大社下社春宮の鎮守の森です。森は谷を覆い尽くしています。この谷底に春宮があるのです。
▲春宮の脇を下る旧中山道
春宮や慈雲寺の近くまで来ると、谷あいの山道からようやく諏訪湖畔の開けた扇状地に来たという感懐を覚えます。
春宮の鬱蒼とした鎮守の森の脇の長い坂を下り左に曲がると、湖畔の都市風景が目に入ってきます。
◆富士山を眺望する街道◆
旧中山道は春宮の脇を通って東に曲がると、下ノ諏訪宿の入り口にさしかかりますが、そこは急な下りの坂道です。そのせいで、春宮脇の旧街道からは、諏訪湖とその周囲の雄大な山岳風景を展望することができます。
快晴の日には諏訪湖の上に富士山の山頂部と稜線を眺めることもできます。その方向は湖の東端近く、上諏訪方面の山並みの谷間で、諏訪大社下社秋宮の右上方です。
ここから眺めると、諏訪大社上社の2つの宮は、湖の対岸の富士山を挟んで秋宮と対称の位置にあります。
▲坂道からの諏訪湖の眺め
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