◆春宮と秋宮との相似性◆
諏訪大社下社の春宮と秋宮は神楽殿と拝殿ならびに宝殿の造りと配置がよく似ています。相似的に造られているのだそうです。
拝殿の内奥にある2つの宝殿の背後に神木があるのも、同じです。ただし、春宮の神木は杉で、秋宮の神木はイチイだという点が違っています。
そしてすでに見たように、春宮は、秋宮よりもコンパクトに造られています。秋宮に比べると境内にある摂末社もかなり少なめです。
同じ諏訪大社下社ですが、秋宮と比べて春宮はとても静謐な境内の雰囲気です。山のなかの神社という感じがします。
▲「結びの杉」と呼ばれる巨木(中央右手)
ところで、春宮の幣拝殿や神楽殿が向いている方向は、秋宮とは異なっています。秋宮拝殿は諏訪湖の北西端を向いているに対して、春宮拝殿は諏訪湖の中心部を向いています。湖の対岸の上社本宮を望む角度かもしれません。
他方で、上社本宮の拝殿は春宮とは反対向きに湖の中心を向いていて、下社春宮を望む角度ともいえます。そして、上社前宮は下社秋宮の拝殿と正反対の方向――八ヶ岳の中心――を向いているようです。
◆中山道と砥川の間の森の中◆
▲砥川から水路で用水を分流する
春宮は、砥川がつくった谷がようやく終わり、諏訪湖に向かって扇状地が開け始めた地点にあります。境内の左右と背後に山林が広がっています。街並みは春宮の手前で途切れます。
春宮は山裾の谷の底にあって、東西両側には尾根筋が張り出していています。谷筋の底には水が集まって渓流を形づくっています。
それが砥川で、春宮の西脇を流れ下っています。そして、砥川を見おろす東脇の尾根の中腹を旧中山道が通っています。
こうして、春宮は川と街道に挟まれ、森に取り囲まれているのです。
▲春宮の脇で砥川の河床は一気に広がる
春宮を境に砥川は谷川から平原の川に姿を変えます。谷のなかの狭い河床が一気に広くなります。ここから諏訪湖に注ぎ出す河口まで2.5キロメートルほどです。
そんな春宮の境内には、神楽殿の奥に左右の片拝殿を連結した幣拝殿を配し、神楽殿の西側に筒粥殿と子安社、東側に若宮社と諏訪社が置かれています。
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