国道148号はさのさかスキー場駐車場横を過ぎると、姫川源流部湿原を回り込むように佐野坂峠の裾を東に曲がっていきます。駐車場にクルマを置いて国道の向かい側に渡ると、すぐに姫川源流自然探勝園に入ります。
園の案内板によると、この佐野坂峠下の窪地は標高が745メートルなのですが、周囲の山岳から冷気が下降して溜まるうえに、土壌が貧養で弱酸性という厳しい生存環境なので、亜高山ないし高山性の植物が繁茂しているということです。
自然探勝園は、東西と南北それぞれに700~800メートルほどの広がりで、北側を除く三方が丘陵で囲まれている窪地となっています。この窪地は、ドウカク山から西に張り出したなだらかな尾根丘陵によって、南北に仕切られています。南側が親海湿原で、北側が姫川源流湿原です。
自然探勝園として保護される以前は、この一帯の丘陵地には杉が植林され、湿原の縁には水田があったようです。
▲親海湿原の縁に残る長方形の水田畔の跡
▲木道の曲がり角には踊り場がある
▲親海湿原をジグザグに進む木道
◆親海湿原を歩く◆
親海湿原は、繁茂密集している湿原の植物が冬枯れになって、かなり低いところまで見通しがよくなっています。木道を歩いて周囲を見渡すと、西方にはさのさかスキー場がある遠見尾根東端の山岳、南方には佐野坂峠、東から北にかけては峠から北に延びる低い丘陵が連なっています。
湿原には、ひと月ほど前まではみっしり繁茂していたイネ科の植物の冬枯れ景色が広がっています。春から晩秋までは、水辺の植物群が密集して競い合っていたことが想像できます。
初冬の風景の色合いもまた心に沁みわたってきます。高い山はすっかり冬色でやや黒みを帯びた赤褐色、山裾に下るにしたがって朱の色味が増していき、針葉樹はやや黒茶身を帯びた暗緑色、落葉広葉樹は白褐色ないし灰色の幹や枝を露わにしています。そして、湿原低地は黄褐色や白褐色。まだタチヤナギぼ叢林だけが黄緑色の葉をつけています。
初冬の渇水期なので、木道は湿原の東端で岸辺の道となっていました。夏ならここも水辺だったでしょう。ハルニレやハンノキ、ホウノキなどが湿地を縁取るように叢林をなして杉林を取り囲んでいます。遊歩道にはホウノキの大きな落ち葉が降り積もっていました。
▲湿原の縁、杉林の日陰にはシダ類が枯れずにいた
▲湿原の畔の小径にホウノキの落葉が降り積もっていた
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