▲姫川源流湿原の幻想的な風景: 木道階段で湿地間近まで降りることができる(湿地は進入禁止)。
私は親海湿原を出てから、杉樹林のなかの小径を歩いてドウカク山(丘)の頂部まで歩きました。次に丘を北西側に下って姫川源流湧水湿原に向かいました。森の遊歩道は自然探勝園の入り口から来る小径と出会ってから、北に向かっています。
▲ハルニレの大木: 根元から幹が分岐している。樹齢は100年近いと思われる、
姫川源流自然探勝園の湿原や湧水に水を供給している帯水層には、佐野坂峠を越えた高原にある青木湖から浸尋した相当量の水が供給されていると見られています。もちろん、豪雪地帯ですから、それに加えて周囲の山岳の降水がいったん山林に蓄えられて、少しずつこの低地に下って地表に湧き出しているのでしょう。
この一帯の山岳にはミズナラが多く、さらに標高の高い斜面にはブナが広大な森林を形成しているのです。保水性がきわめて高い森林が広大な範囲をおおっているはずです。これらの樹木の根には驚くほどの水が蓄えられています。
さて、下に掲載したグーグルマップを見てください。姫川の渓流はこの自然探勝園の西方に2キロメートル以上離れた山岳(尾根斜面)から東流してきて、この湿原の近くで北転します。この湧水湿原から出た流れはそれに合流するのですが、年間を通じてみると、合流点での姫川への水供給量では、この湧水地からのものが過半をなすものと見られます。
湿地から湧き出した水が集まってわずか8メートルほどで川の流れを形成する▲
▲源流部の小さな湿原の末端では水流が集まって沢を形成する
▲湿原のハルニレの大木。 樹齢は100年を超えているかに見える。
姫川のもうひとつの源流は、さのさかスキー場方面の渓谷から来て、この湿原から100メートルほど北で流れを北に転じます。その流水量は、降雪前の渇水期ということで、前のページの姫川の写真が示すように、ごくわずかです。
それに比べると、この湧水地から流れ出ていく川の水量は何十倍にも達するほど豊富です。急峻な山腹に湧き出て下る水は、まさに皮相的なもので量が限られます。ところが、山腹から樹木の根に蓄えられてから地面の下の帯水層・水脈に入り込む水は、非常にゆっくり移動し、扇状地の下や窪地で湧き出します。
きわまて緩慢な湧き出しですが、絶え間なく、ずっと広い面積に出現するので、総体として膨大で、しかも年間を通じて安定した水量となるのです。
私は前はこう思っていました。「姫川源流自然探勝園」という名称だが、姫川の源流でも主要な渓流はこの窪地ではなく、山のもっと上の方から来るか沢の方ではないかと。地図での判断では、そういう見方だったのです。
ところが、この湧水湿原に訪れてみて、その見方は間違っていたと気づきました。春の雪解け期には、一時的に山の上の方から来る沢の水量の方が多くなることがあるかもしれないけれど、やはり年間をつうじての流水量はこの湧水地からの方が圧倒的に多いということです。
蛇足ながら観光地としての地理滝配置を説明しておくと、自然探勝園は佐野集落の東の低湿地で、ドウカク山を挟んですぐ東隣には内山集落とクロスカントリー・スキーコース、そして北には三日市場集落と広大な水田地帯があります。まさに雄大な山岳風景と田園地帯が広がっています。農村風景が好きな人、自然観察が好きな人におススメの場所です。
ハルニレの幹あるいは枝に寄生したヤドリギ▲
水源湿地を回り込んで荒神社に向かおうとしたとき、湿地に立つ一本のハルニレにヤドリギが寄生しているのを見つけました。かなり繁茂しています。ヤドリギの葉は写真では暗褐色に見えますが、まだ濃い緑色をしています。
ヤドリギは自前の根を持たずに、水の豊富な場所に生えているブナなどの高木に寄生してどの維管束から水分(と唐・ミネラルなどの養分)を吸入し、日当たりのいい場所に枝葉を延ばして活発に光合成をおこないます。寄生された宿主樹は、消耗するのでその分寿命が短くなってしまいます。
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