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長野県北安曇郡白馬村神城
歴史の厚みを感じる村


▲塩の道から西の尾根を見上げる: 画面中央の土蔵は白馬村の伝統的な造り

  佐野もまた信州の古い歴史がある山村の例にもれず、過疎化・少子化と高齢化が進んでいます。集落には「さのさかスキー場」がありますが、存続するか継続するかの岐路に立っています。集落には民宿が多く、リゾート地を維持しないと経済が立ち行かなくなるかもしれません。
  私自身は、佐野はこれだけの歴史と伝統文化がある地区なので、市や村の境界を飛び越えて、歴史文化観光と農村体験、近隣の高原や湖、森林を総合的に連結した住民の日常生活と結びついた観光を企画すべきだと考えています。近隣の集落、沢渡、飯田、内山、三日市場などとも連携して、地区割りを超えたものを。


▲村の中心をなす「お堂様」と道祖神: 紅葉も終わり冬が近づいてきた

  私は白馬村各地の集落をを総合的にかつ詳しく紹介するこのサイト記事を企画編集そていますが、古民家や集落、野仏や森林・・・地元の人たちにはごく当たり前の風景がことのほか美しく、崇敬に値する文化と歴史を保持していると印象づけられました。お年寄りたちとの対話は私にとっては宝です。村が住民参加のSNSサイトを設けて、住民にもっと気楽に足元の風景や生活を発信してもらえば、世界中から注目されることになると思います。
  集落の家並みも含めて、これほど美しい風景、歴地と伝統がいたるところにある村は、なかなか見つかりません。今ある、そのままの姿が素晴らしいのです。そんな気持ちで、佐野村歩きと取材を続けています。


千国街道から国道に下る小径。道の脇の漆は落葉している。▲

◆古い歴史と観光と・・・◆


▲民宿となっている古民家

▲その隣家の土蔵: 白壁が美しい

  今回は「お堂様」を出発し、塩の道を南に「さのさかスキー場」手前まで足を伸ばし、そこから集落のなかを散策して国道を渡り、集落の東側の家並みを眺めて回ることにします。
  塩の道(千国街道)は、「お堂様」脇の石仏群の脇を通って南に向かいます。路傍ではひと叢のススキの穂が晩秋の陽を浴びて輝いています。街道の西側は南北に延びる尾根で、その奥には遠見連山の東端の峰、天狗岳が控えています。尾根裾は緩やかな東向き斜面で、街道からはその斜面に民宿となっている古民家が見えます。

  街道は、この先の佐野坂越えを見越して、尾根裾丘陵の一番上の段を通っているので、東側に開けた水田地帯や湿原を見おろすことができます。
  やがて、小径の西側に明神社風の造りの小ぶりな寺院が見えてきました。小さな本堂だけで、そこまで山桜の並木の下に参道が続いています。参道脇の立札説明板によると「東徳寺」という由緒の古い寺院だそうです。
  東徳寺については、別のページで特集することにします。


▲佐野の街道沿いの家並み

▲洋風山小屋のような民家も目立つ

▲塩の道はこの段丘の上を往く

  さて、姫川を渡り「さのさかスキー場」の手前まで来たので、ここから引き返すことにしました。
  すると、畑地のなかに草でおおわれた道があります。舗装していない農道のようで、片側が並木になっています。そして、道脇のカヤノキの根元に双体道祖神を見つけました。
  ということは、別の場所からここに移したのでなければ、この道は今ではあまり人が通っている様子はありませんが、かつては人の往来が盛んな道だったということでしょうか。


▲この坂を下ると、姫川支流の沢に出る

▲坂道で振り返ると粋な風景だった

  これまで通ったことがない道を選んで進むと、樹林や並木と古民家があいまって印象派が好みそうな農村の小径風景に出会うことができました。写真を撮りながら国道まで下り、国道を渡って集落の東側の家並みを観察することにしました。
  こちらの方が民宿やロッジ、ペンションが多いようです。あるいは坂の上の地区よりも住民の年代が若くて、現役の宿泊施設がより多いということかもしれません。


街道から民宿「上屋敷」と山並みを見わたす

街道傍らのススキの穂が白く輝く

来し方(北)を振り返る

古い歴史を誇る東徳寺への参道石段

路傍のカエデの紅葉:まさに燃えるような赤

晩秋の陽射しに輝く里山

もとは民宿か。広壮な民家。

草の小径: 昔日の街道風景に似ているか

カヤノキの根元の双体道祖神

蕎麦畑の上から東を見おろす

「ロッジ中峰」という民宿の脇の道を下る

佐野集落を南北に縦断する国道148号

国道の東側に茅葺古民家が残っていた


▲伝統的な風景は今も残っている

  10月末のこの日、集落を歩いているとき、佐野村中道祖神の周りを清掃している若者に出会いました。降り積もった落ち葉を片付けていたのです。
  その若者に私は「お堂様」と呼ばれる社殿が何なのかを尋ねました。「神社の倉庫ですよ。神社としては、すぐそこに氏神様があります」という答え。氏神社があることも教えてもらいました。
  近隣のお年寄りにも話を聞くと、その若者は「その人は地区の役員で清掃当番だろう。この地区には若い跡継ぎはいないので、移住してきた若い人です」とのこと。私は、外部から若者が移住してきて村に暮らすようになったことに安堵と喜びを覚えました。
  仕事を求めて多くの若い世代が村を後にした一方で、都会からここに移り住んで、村の自然や文化を大切にして住民共同社会に加わろうとする若者もいるのです。

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