▲陽だまりが温かい小径
◆沢渡・佐野の地形◆
グーグルの立体地形図を見ると、五竜岳と爺ケ岳の尾根は、これらの中間に位置する鹿島槍ケ岳を外輪山のように南北から取り囲んでいます。五竜岳の峰から続く遠見尾根は分岐して南北に延び、南伸する尾根は鹿島槍ケ岳の東に回り込む形で、尾根の東側に南北に深い谷をつくっています。その谷を挟んで並行する尾根が青木湖とのあいだに立ちはだかっています。その尾根の東側裾野の扇状地斜面にあるのが沢渡と佐野の集落です。
塩の道は、この南北に延びる尾根筋の東側裾野を往く小径です。飯田村の南にある次の宿駅は佐野村で、沢渡はその中間にあるのです。沢渡地区の塩の道を歩いて楽しみましょう。
11月はじめ、白馬村では晩秋から初冬への端境期です。つい先日の未明まで、この辺りには雪が舞い、山裾までうっすらと雪が積もりました。木々は紅葉から落葉へと急いでいます。こんな風に、往時の旅人は山の自然のありがたみと脅威をともに感じて街道を行き交っていたのでしょう。
さて、小学校を迂回した街道は北原庚申塚石仏群の前で直角に曲がり、沢渡集落に向かって南進します。
▲初冬の木漏れ日が草原と石仏群に降り注ぐ
▲石仏群の脇を南進する街道
◆晩秋の沢渡――街道風景◆
沢渡地区に入ると、街道脇の風景は山裾の農村の色合いを一気に濃くしています。山林が間近に迫っているからでしょう。
私は、南東からしだいに高度を上げていく太陽のまぶしい光を正面に受けながら南に歩くことになります。青く晴れ渡った空の下には、紅葉の盛りを過ぎて明るい黄褐色を帯びていく山野が広がっています。
この村でも、私はおじいさんやおばあさんに出会って、この時季の近隣の風景の美しさや村の歴史、古民家暮らしについて話を聞くことができました。
▲山腹から麓の水田まで錦繡に染まる
▲ススキの穂が白く輝いている
▲来し方を振り返ると・・・
沢渡集落では千国街道は山裾を等高線に沿って南北に往還しています。したがって起伏や坂はほとんどありません。ところが、街道に連絡あるいは交差する村道――姫川河畔の田畑や国道に向かう小径――は東西にはしっていて、いわば等高線を縦断するかたちになっています。つまり坂道となっていて、東に向かって緩やかに下っていきます。
沢渡集落も、飯田や飯森と同様に、山裾に位置する姫川の河岸段丘の上につくられたのです。姫川河岸は低湿地となっていたので、開拓農民は山裾の丘陵に居住拠点を建設し、河畔の低湿地で苦難に満ちた水田開発をおこなったのです。
|