▲この辺りの典型的な古民家
千国街道の遺構は沢渡の南端で杉樹林のなかに埋没してしまっているので、私は林の西を回り込む小径を進んで南神城駅の前を通って、佐野集落に向かうことにしました。樹林に陽射しを遮られた薄暗い小径は、昔の街道の様子に近いかもしれません。
ところが、杉林を出ると晩秋明るい陽射しが輝いています。南神城駅の近辺には金属板を被せた茅葺古民がいくつか残されていて、敷地内には白馬村に特有の、壁の外に屋根を支える木枠を設けた土蔵もあります。
南神城駅は尾根裾の小高い斜面にあるので、佐野集落の中心部には坂を下って行くことになりますが、この坂道は湾曲して東向きになって千国街道と交差したのち、さらに国道148号に合流します。
私は千国街道を南に歩いて集落の中心部をめざすことにしました。街道はふたたび国道と並行するようになりました。
街道を歩いているうちに、佐野村の中心部辺りには小さなお堂や社殿がいくつかあることに気がつきました。
▲道祖神脇から塩の道を振り返る
▲小さなお堂がひとつ上の村道の脇に見える
▲小堂の前まで行ってみた
◆氏族ごとの小堂や社殿◆
集落の中心部には「お堂様」と呼ばれる小ぶりの社殿があって、その前は村道が何本か交差する広場となっていて、道祖神も置かれています。どうやら村の祭事の拠点(中心)となる場所のようです。
広場のすぐ近くには小さな社殿が2つ、30メートルほどの近い距離で設けられています。近隣のおばあさんに出会って話をうかがうと、佐野村では同じ姓を名乗る一族ごとに、小さな社に氏神様を祀っているとのこと。
また、社殿のほかに寺院風の小堂もあって、それもやはり氏族の霊を祀る場所なのだそうです。そして、「お堂様」と呼ばれる社殿風の建物は、村の祭事にさいに使う幟などの神事用品を保管しておく倉庫だということです。
▲「お堂様」の脇の石仏群
「お堂様」の隣の小丘上には数多くの石仏や石塔が集まっています。これも石仏群なのでしょう。これと向き合うように、道祖神もあります。今は村道の五差路交差点となっているのですが、かつては「お堂様」の前には祭事や集会用の広場(祈りの場)があったのでしょう。
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